課金していただくメンバーの方々とは、基本的には長期のおつきあいになります。課金し続ける価値があるかどうか長い目で判断していただけるので、記事のつくり方に対する私の意識もだいぶ変わりました。
半年後、1年後を振り返ってみても「この人の書いた記事はちゃんとしている」、「信頼できる」と思ってもらえることを念頭において、1つひとつの記事を書くようにしています。
このやり方なら、ビューをとるために無理に発信を続ける必要がありません。背伸びをしない発信は、顧客にとっても自分にとってもすごく誠実だと思っています。
スタートアップの資金調達としてのサブスク
──けんすうさんもnoteで課金制の定期購読マガジン(月額制で記事を販売できる機能)をやっていますが、けんすうさん個人ではなくアル開発室として企業で運営しているのが特徴的ですね。
古川 スタートアップである当社の裏話、主に失敗談を記事にしています。
記事をずっと読んでくれているお客さんは、商品開発の途中で起こったさまざまな出来事を知っているので、当社が新しいサービスを出したときにすごく応援してくれるんですよ。
定期購読マガジンは事業としてやっているので、その収入は会社の運営費用の足しになっています。スタートアップはお金が潤沢じゃないところが多いので、月500円×100人で月5万円の売上だとしても、毎月入れば結構大きいですよね。
アル開発室では、月20本の記事を配信しています。毎記事約3000字ですので、月の合算で6万字。軽いビジネス書ぐらいのボリュームになります。ですから、お客さんも半分はコンテンツ代、もう半分は応援代という感じで、納得感や満足感が得やすいのかなと思います。スタートアップの資金調達方法としては、おもしろいやり方じゃないかなと。
後藤 受け手が人格を感じ取ることができない大企業が同じような発信をしても、ここまで人をひきつけることはできなかったでしょうね。
アル開発室では、アウトプットもけんすうさん自身がやってらっしゃる点が大きいと思います。
古川 そうですね。会社の顔となる人が、インフルエンサーのように発信するのがすごく重要ですね。
昔から、企業としてやるからには仕組み化しないといけない、従業員の誰でもできるようにしないといけないなどと言われてきたと思うんです。でも今は、逆のことが起きているというのが僕の感覚です。
──企業としての発信でも、“人らしさ”を感じられることがとても大切ということですね。結局、人間は人間を応援したいものなんですよね。組織ではなく。