OpenStreet代表取締役社長の工藤智彰氏は、もはやシェアサイクル──つまり自転車だけではなく、さまざまなモビリティを含めたシェアサービスを展開するプラットフォームが求められると判断した。今回の道交法改正で特定小型原付の領域を拡大することで、総合的なモビリティのシェアリングプラットフォーム作りを目指すと語る。
市場としては私たちとドコモの「シェアサイクル」だけの戦いではなくなってきています。
道路にモビリティを置くという点ではLUUPもドコモも一緒なのです。特定小型原付でどれだけ(シェアを)大きく広げられるのかが課題です。OpenStreet 工藤智彰氏
では特定小型原付の領域でのシェアサービスとして電動キックボードを選ばず、新車両の開発でglafitと手を組んだ理由はどこにあるのか。
今回の法改正は“キックボード改正”と言われていますが、実は特定小型原付のサイズは自転車と同じです。なので、そこを狙うべきではないかと考えました。glafitとは以前から話をしていましたが、法改正に対する考え方が一緒だったのです。キックボードもあるけれども、一番いいのは自転車(タイプの特定小型原付車両)。
ターゲットとしては首都圏1都3県の市街地や人口集積地。それと同時にスポットで観光地も狙っていく。こういったところで新車両が使えるようになると、移動の概念が変わると思います。
今(のシェアサイクル)も公共交通機関の補完をしている。例えば1本の電車が通っていれば、その周辺の道をまるで毛細血管のように細かく動くときに使われることが多い。そこにglafitの車体が加われば、さらに移動は広がります。工藤氏
カギになるのはスーパーアプリ「PayPay」
OpenStreetにはソフトバンク傘下ならではの強みもある。それはスーパーアプリである「PayPay」との連携だ。実はHELLO CYCLINGはPayPayアプリ内からも利用が可能。PayPayのIDを利用できるため新規登録の手間もかからず、初期ユーザーの心理的ハードルも低い。工藤氏によると、新規会員登録するユーザーの多くが、出先、つまりポートの前で登録していることが分かっているため、PayPayはHELLO CYCLINGの動線として大きな役割を果たしているのだという。
冒頭にも書いたとおり、特定小型原付の区分ができる改正道路交通法は2024年春までに施行される予定だ。1年半後には、両社が手がける新車両や、電動キックボードが走り回り、日本のラストワンマイル移動の姿が大きく変わっているかも知れない。