良質な質問を増やすため、Quoraでは投稿された質問を後から誰でも編集することができる。これによってより多くの人に訴求しやすく、わかりやすい質問文が形成されていくわけだ。改稿された質問が元の質問者の意図に沿わなかった場合は改めて修正すればよく、情報を公共財として捉える発想もWikipediaに近い。

良質な質問の投稿者には、金銭的なインセンティブも用意されている。優れた質問・回答を投稿していると判断されたユーザーは「パートナープログラム」に招待され、以降は良質な質問を投稿すると報酬を得られるようになる。報酬額は閲覧数などによって決められており、1つの質問で1万円以上稼げるケースも少なくない。過去には1つの質問で100万円以上の報酬を得たユーザーもいるという。

AIを初めとするテクノロジーも、良質な質問を生む環境を下支えしている。Quoraではニュースフィードの表示などに機械学習によるパーソナライズを取り入れており、その指標にはユーザーの読了時間や投稿者が執筆にかけた時間、シェア率など約200もの数値が参照されている。ほかにも、いま読んでいる質問に似た質問のレコメンドやコメントの表示量など、さまざまな要素が機械学習によって規定されている。

必要なのは、「人」ではなく「トピック」をベースにしたコミュニティ

Quoraは、Yahoo!知恵袋などの質問サイトや「mixi」のトピックごとのコミュティといった既存サービスに似た要素が多く、一見すると新しいコミュニティサービスだという印象は受けない。しかし、江島氏は「今のネットにこそ、Quoraのような存在が必要だ」と語る。

TwitterやInstagramといったSNSを情報収集手段として活用する人は増えているが、一方でユーザーが増えすぎたがゆえの問題も多発している。その一例が、「フェイクニュース」の拡散や、度が過ぎた誹謗中傷だ。

こうした現状を、「今の日本には優良な言論を交わせる空間が減ってきている」と江島氏は捉えている。では、なぜそうなってしまったのか。その理由を江島氏は、現在勢いのあるサービスの多くが「人」を軸にしたつながりのメディアだからだと指摘する。

「他人と相互に友達になるのではなく、ただ『フォローするだけ』というTwitterの仕組みは、当時は画期的で、多くの有名人が利用するきっかけにもなりました。しかし、今はそれがむしろ仇になっています。例えば、フォロワー1000万人の有名人と10人の専門家が同じ話題に言及したとしても、Twitterはフォロワー数がそのまま力になるゲーム。前者の誤った発言を後者が指摘しても、多くの人はそれに気づけない仕組みになっています」(江島氏)