マーケティングのデジタルシフトで販売額は月間最高記録を達成

ローンチから4年。累計取引数は1000万件以上。年間の流通総額は約1000億円(10億ドル)を突破。StockXは巨大なマーケットプレイスに成長した。直近ではコロナ禍では2020年に予定していたマーケティング施策の多くは白紙となったが、5月、6月は販売額で月間最高記録を更新した。

社会的距離を保つ必要があることから、対面が発生する物理的なイベントは開催できないーーそこで同社は顧客との接点をオンラインに絞った。結果、ゲストを招いたオンライントークイベントなどには特定のエリアからだけではなく、世界中から参加できるようになり、想定以上の集客に繋がった。

「スポーツチームや音楽イベントのスポンサー。このような予定の多くはなくなりました。誰もが外出を自粛せざるをえない。そこで我々は『対面で得られる体験をどうオンラインで提供するか』を必死に考えました」(CMOのバーリ氏)

4月にはStockXが制作したドキュメンタリー映像作品『We’re Not Particularly Talented, We Just Try Hard(編集部訳:僕たちには別に才能があるわけではない、努力をするだけだ)』を公開した。ファッションデザイナーのリース・クーパー(Reese Cooper)氏を題材にした作品だ。

バーリ氏いわく、StockXでは作品の公開に合わせて、ロサンゼルスで大規模なイベントを開催する予定だった。だがコロナ禍で方針を変えざるを得なくなり、イベントはオンラインで実施。幸いにも、世界中から参加者が集まる熱度の高いイベントになったという。

日本版に期待される“独自コンテンツ”と“コラボレーション”

日本進出もコロナのあおりを受けた。法人こそ3月に設立したものの、ローンチイベントは白紙になり、マーケティング戦略も大きく変更せざるを得なくなった。バーリ氏らは日本戦略について、まずはUI/UXの最適化と、日本独自のコンテンツ発信という地道な手段から進めるという方法を選んだ。

StockXでは、自社の認知向上とスニーカー文化の発展を目的に『The Magazine』と題したオウンドメディアを展開し、著名人のインタビューやスニーカーの歴史など、さまざまなコンテンツを制作している。現在は英語版(日本版では翻訳コンテンツを掲載)しかないThe Magazineだが、バーリ氏はそこに日本独自のコンテンツも掲載したいと考えている。そして、ゆくゆくは日本のブランド、ファッションデザイナーやタレントとのコラボレーションも期待していると同氏はつけ加える。