つまり、多くの人に安価なデータ通信が提供できるようになり、潤沢なデータ通信を使った新しいサービスが登場することになる。大容量のデータ通信を使う動画見放題サービスが重視されるのは、そのような背景があってのことだ。
“コンテンツ化”する高性能スマホ
背景には、スマートフォンの台頭がある。アップルのiPhone、グーグルが主導するAndroidの2大プラットフォームへの集約が進んだ。どこのメーカーやキャリアのスマートフォンを買おうと、使える機能はほとんど変わらない。
また、3Gまでは携帯キャリアが積極的に端末の開発を行っていたが、スマホメーカーの淘汰が進み、その力関係も変化した。大手スマホメーカーのモデルを世界の携帯キャリアが一斉に導入する形式が一般的になっている。
つまり、携帯キャリアにとっては、スマホ自体で差別化できる要因が減っている。それがエンタメ重視の遠因になっているというわけだ。
さらに、スマホそのものが“コンテンツ”になっている傾向もある。初期の5Gはエリア展開も限られている、スマホに「5Gでしか使えない」機能を投入しても魅力は薄い。そのため、5Gスマホでは、5Gとは直接関係の無い新技術を投入が進んでいる。
折りたたみスマホはその代表格で、大画面をコンパクトに持ち歩けるという機能性が売りになっている。また、高解像度な8Kビデオ撮影が可能なスマホも複数のメーカーから登場している。
ハイエンドスマホのラインナップは、言ってしまえばブランディング戦略だ。機能的に尖った機種を並べることで、5Gの先進性をアピールできる。
「安いスマホ」ほど差別化が難しい
その一方で、販売の主力となるのが、中価格帯(ミドルレンジ)のスマホだ。だが、こと5G対応のミドルレンジとなると、差別化が難しい。
携帯電話販売の現場では、2019年10月に大きな市場変動が発生した。かつては高性能なスマホに高額な値引き(キャッシュバック)をつけて他社からの契約獲得を狙う呼び水にしていた。
だが、総務省が携帯キャリア向けの新たな販売ガイドラインを策定。スマホの高額な値引き販売が制限された。スマホ本体代の価格が重視されるようになった。ミドルレンジに追い風が吹いたとも言える。
大手携帯キャリアでもミドルレンジスマホの取り扱いを増やし、1万円台で買えるモデルも登場した。
「すべて5G化」と「サブブランド強化」はコインの裏表
そこでauが打ち出したのは「今後のすべてのスマホを5G化する」という方策だ。販売するスマホがすべて5G対応となれば、新機種を購入する際には5Gしか選ばれないことになる。