実際に導入企業からは代行サービスの引き合いがかなり多い。そもそもタクシー市場自体が緩やかに衰退傾向にあるため、今まで負担になっていた配車業務をアウトソースすることで経営を合理化したいという考えを各事業者が持っている。そしてその流れを加速させたのが新型コロナウイルスだ。
「コロナの影響で全国平均では売上が昨対比で50〜60%落ちているような状況」(近藤氏)であることから、コスト削減を目的とした代行サービスの需要が増しているという。
クラウド型配車システムについても配車業務の効率化・コスト削減が事業者視点での大きなメリットになるが、最近では徐々に新たな顧客を獲得するための「ハブ」としても機能し始めていると近藤氏は話す。
「そもそも旧来型のシステムでは最新のコンシューマー向けの配車アプリと連携できないため、アプリ経由の注文に上手く接続してスムーズに対応するということができませんでした。弊社の配車システムの場合、連携しているサービスからの注文は全て1台のタブレットに集約して処理することが可能です。その結果として、今までタクシー業界に発生していなかった売上や顧客を送客することもできます」(近藤氏)
現在はMobility Technologiesが展開する「JapanTaxi」とJR西日本のMaaSアプリ「setowa」に対応済み。こうした他サービスとの連携も含め、最新の社会状況を踏まえたアップデートが頻繁に実施されるのも、クラウド型配車システムの強みだ。
「配車システムを買い換えるサイクルは通常8〜10年ほどです。変化のスピードが凄まじい今の時代において、数年間アップデートされないというのは大きな機会損失にもなります。細かいアップデートが随時行われるのはSaaS型の強み。実際に2019年には1年間で600のマイナーチェンジを実施しました」(近藤氏)
インサイダーとして業界の内側からタクシーのDX推進へ
電脳交通では今回調達した資金を活用しながらさらに事業を加速させていく計画。これまで同様“インサイダー”として、内側からタクシー業界のデジタルシフトに取り組む。
ただこれまでと方向性自体は変わらないものの、「地方の中小規模のタクシー会社を救うことから、徐々にタクシー自体を再定義していこうというモードに変わってきているフェーズです」と電脳交通でCOOを務める北島昇氏は話す。
今では25都道府県に顧客が存在し、大規模な事業者にもサービスを提供するようになった。既存株主のJR西日本やNTTドコモなどともタッグを組みながら、複数の地方自治体と一緒に各地域における移動の課題解決に向けた事業も始めている。