タクシー業界は課題も多い
タクシー業界は「従業員の高齢化(全国平均60歳)」や「人手不足」など課題も多い

配車業務を効率化するシステムは当時から存在していたものの、そのほとんどがベンダーが開発する大手事業者をターゲットにしたもの。全国に約6300社あるタクシー会社のうち、実に7割ほどを占める中小規模の事業者にとっては価格帯が合わず、いきなりハイエンドなシステムを導入することは難しかった。

それならその7割の企業が導入できるようなプライシングで、最新の機能を盛り込んだシステムを提供してしまえばいい。そこから近藤氏らによる配車システムのプロトタイプ作りが始動する。

開発を担当したのは近藤氏と同じく徳島出身のCTO・坂東勇気氏。坂東氏は東京のITベンチャーを渡り歩いた後、ゼンリンデータコムで地図情報を扱うエキスパートとして働いていた人物だ。坂東氏が作ったプロトタイプを近藤氏が実際にタクシーに設置してテストし、改善点を洗い出して改良する。このプロセスを繰り返しながら“吉野川タクシーのガレージ”でプロダクトを作り上げた。

当事者が本当に必要とする仕組みをプロダクト化して提供

電脳交通が展開するクラウド型配車システム
電脳交通が展開するクラウド型配車システム

電脳交通のクラウド型配車システムは、配車オペレーター用のインターフェースとドライバー用の車載タブレットで構成される。オペレーター用のシステムでは1画面上でオーダーと車両の両方を確認できるようにすることで、スムーズな配車を実現。会社ごとの細かな配車ルールを分析し、最適な配車をサポートする仕組みも搭載する。

車載タブレットでは4G通信で車両位置と状態を管理できる仕組みに加えて、送迎場所と目的地への経路を分析し、ルートを最適化する機能を搭載。IP無線で音声配車にも対応可能だ。

「タクシー業界において徳島県は47都道府県中最も売上が低い地域だと言われています。吉野川タクシーはその中でも最小規模で、タクシーがわずか9台だけ。そんな自分たち自身が欲しい機能、納得できるプライシングをベースにプロダクトを作ってきました。またローンチ前から現在に関しても、常に顧客の声を参考に機能開発を進めています。だからこそ現場で本当に必要とされるものを作れている手応えもあります」(近藤氏)

車載タブレットの画面
車載タブレットの画面
 

これらのサービスをタクシー1台あたり月額数千円規模で利用できるSaaSとして展開。直近では大規模事業者からの要望に応える形で、自動配車機能やデータ解析機能といった追加プランの拡充も進めている。

また配車スタッフの採用が難しい企業には「配車業務の代行サービス」も提供する。近藤氏の話ではコールセンター部門における人材不足の悩みはどの会社にも共通する上に、多くの会社が同じような業務をしているそう。それらを統合して一箇所で効率よくやってしまおうというのが、代行サービスのコンセプトだ。