前田氏は、少子化のこの状況が「日本のSaaSに特化して投資活動を行う理由のひとつでもある」と語る。「SaaSやAIが普及しないと、このままでは結構日本の経済はマズいんじゃないかという危機感を感じています。生産性は何倍にも高めなくてはならないので、今よりもSaaSをもっと普及させる必要がある。でなければ、日本の競争力は薄まるし、世界から無視される国になっていくでしょう。そうならないためにも、世界一の生産性や技術力を持っておくことは重要だと思います」(前田氏)
米国、東南アジア、インドなど世界のSaaS動向は
翻って世界のSaaS動向は今、どうなっているのか。SaaS先進国・アメリカでは、50社以上のSaaSスタートアップがIPOを果たしている。普及も進んだことから、特定業務・特定業種に細分化されたSaaSが現れ、浸透している状況だと前田氏はいう。
そこで生まれた需要が「データ連携」だ。「SaaSで大量のデータを持つことによって生じた課題を解決する、データウェアハウス、データマネジメントなどのSaaSが注目されています」(前田氏)
最近では10月12日(米国時間)、電話・SMSなどのコミュニケーション手段をアプリなどに連携するSaaSを提供するTwilio(トゥイリオ)が、約3400億円で顧客データスタートアップのSegment(セグメント)を買収したことを発表した。「Segmentのプロダクトはまさに、さまざまなSaaSプロダクトのデータ連携を促進するもののひとつです」(前田氏)
また、9月にニューヨーク証券取引所に上場し、評価額700億ドル超の値を付けたSnowflake(スノーフレーク)はクラウドデータウェアハウスのスタートアップだ。投資家のウォーレン・バフェット氏が投資会社Berkshire Hathaway(バークシャーハサウェイ)を通じて「珍しくハイテク株に投資した」と話題になった。
ID連携・アクセス管理クラウドのOkta(オクタ)なども例として挙げた前田氏は、「テーマとして共通するのは『SaaSが普及した後に、どうすればSaaS同士が連携できるか、どうすればたまっていくデータを活用・管理できるかといった課題です。アメリカのSaaSはそういうフェーズに進んでいます」と話している。
日本でもSaaS同士の連携を支援するSaaSが少しずつ出てきてはいる。ただし、日本の1社当たりの平均SaaS導入数はまだ1桁台〜10数個程度で、1社平均20個以上を導入していると推測される米国と比べれば少ない。「日本ではデータ連携のニーズはこれから。今はSaaS普及と活用のフェーズと考えています」と前田氏も述べている。