東南アジアに目を転じると「リアルにかかわるビジネスでSaaSが普及し始めている」と前田氏。飲食業界や物流業界向けのSaaSが最近目立っているとのことだ。理由として前田氏は「これらの業態の市場が大きく、事業が立ち上がりやすいこと」「エンタープライズ企業が少ないのでSMB、店舗などで使われるサービスに目が向けられていること」を挙げる。

また、インドではローカルではなく「最初からグローバル展開するSaaS」が多いことが特徴だそうだ。象徴的な例として前田氏が挙げたのが、カスタマーサポートクラウド「Freshdesk」を皮切りに、Google Workspace(旧G Suite)のような各種サービスを展開するFreshworksだ。

「インドでは英語への抵抗が低いこともありますし、アメリカでのインド人コミュニティの強さ、Microsoft CEOのサティア・ナデラ氏やGoogle CEOのサンダー・ピチャイ氏など、グローバルIT企業で活躍するインド人の存在も、インド発の起業家がグローバルを目指す理由となっていると思います」(前田氏)

世界規模の海外VCが日本発SaaSに注目・投資する理由

各国のSaaSがそれぞれの国でプレゼンスを高める中で、昨年来、海外の著名VCによる日本のSaaSスタートアップへの投資が本格化している。

マーケティングプラットフォーム「b→dash(ビーダッシュ)」を提供するフロムスクラッチは2019年8月、米国のPEファンドKKR(Kohlberg Kravis Roberts & Co.)を含む引受先から総額約100億円の調達を発表。オンラインショップ開設や決済サービスを提供するヘイは、2020年8月に米国の投資会社Bain Capitalを含む引受先から約70億円の調達を発表した。9月にはSmartHRが世界最大規模のVC、Sequoia Capitalの関連ファンドSequoia Heritageからの資金調達実施を、10月にはアンドパッドが、Sequoia Capitalの中国現地法人Sequoia Capital Chinaから出資を受けたことを明らかにしている。

前田氏も「海外VCからは毎日のように連絡が来る」と言うように、日本のSaaSスタートアップが世界の投資家から注目を浴びていることは間違いがない。その理由は何か。

前田氏はまず、SaaSがビジネスモデルとして米国で成功していることが土台にあるという。SalesforceやAdobe、Microsoft、Google、Amazonなどのクラウド事業はいずれも業績が伸びている。この1〜2年は先に挙げたSnowflakeやZoomをはじめとしたSaaS企業の上場も相次いでいる。米国のVCから見れば「SaaSの普及は必然」なのだと前田氏は述べている。