山田氏は「働き方改革は日本に大きく2つの変化をもたらしました」と語る。
1つ目は、健康を害しながら働いている人に対する企業努力が求められるようになったこと。具体的には長時間労働に対する労働時間の制限などがそうだ。企業には、従業員の労働時間を把握する義務が生じただけでなく、把握した情報を産業医と共有することが明確に指示されている。
「これは(産業保健の関係者にとっては)『事件』とも言うべき出来事でした。これまでも法律上、従業員の健康に関わってきた産業医ですが、情報という観点では共有を受けてきませんでした。従業員との面接時間の確保や健康診断結果の把握などをがんばってやっていた産業医はこれまでもいましたが、これを確実にやらなければならなくなりました」(山田氏)
このことは人事担当者にも負担をもたらした。情報が紙やExcelデータでファイリングされていた企業では、産業医と従業員の面接に当たり、紙やExcelデータを印刷・コピーなどで共有する必要がある。ここにひとつの課題が浮かび上がった。
2つ目は、多様化する雇用環境だ。多様で柔軟な働き方の実現を目指し、政府は裁量労働制やフレックスタイム制の拡充などのほか、時短勤務、外国人や障害者、高齢者などさまざまな雇用形態による待遇差の解消も企業に求めている。対応する企業には優遇策も用意した。
「これも大きな分岐点・転換点になる出来事だと思います。外国人労働者の例で言えば、日本ではあまり頻度が高くない疾病、たとえば結核などの感染症については、まだ感染率が高い国もある。そうした国からエンジニアを採用した場合など、企業が留意して事業所で流行しないような手立てを考えておかなければなりません。画一的な金太郎飴型の雇用が多様化することを意識して、特に健康問題に関しては敏感に企業が把握していく必要があります」(山田氏)
これを実現するためには、今まで以上に人事担当者や産業医・産業看護師らが、これまでにない環境に対応するための余裕を持たなければならない。
これらの課題を解決するために開発されたCarelyは、これまで紙やExcelで管理されてきた、従業員の健康診断やストレスチェック、長時間労働の状況把握や産業医面談の記録をクラウド上で管理できる、健康管理システムだ。データの一元管理や業務の自動化により、人事労務担当者や産業医・看護師などの産業保健スタッフの業務負担軽減をサポートする。