Kaizenのメインの顧客はエンタープライズ企業のビジネス部門だ
Kaizenのメインの顧客はエンタープライズ企業のビジネス部門だ。画像は新規上場申請のための有価証券報告書より

動画事業に関しても利用用途が広がっている。当初は主に動画広告の需要を見込んでいたが、5G時代を見据えて既存のバナーやランディングページ、紙のチラシ・パンフレットなどさまざまなコンテンツを動画化したいという需要が舞い込んできた。

2020年5月には営業資料を動画化する「KAIZEN Sales」をローンチ。新型コロナウイルスの影響でオフライン開催が難しくなったオープンキャンパスやイベント、展示会などを動画にすることで代替するような取り組みも加速させている。

同社の2019年12月期(第3期)の通期売上高は13億5400万円(前年同期比で37.1%増)で純損失は1億6200万円。直近の第4期では第3四半期までの売上高が11億2900万円、純利益が1200万円と黒字転換も果たしている。

Kaizenのサービス成長の推移
Kaizenのサービス成長の推移。累計取引社数は700社を突破。累計登録グロースハッカー数も1万人を超えた。画像は有価証券報告書より

今回のタイミングで上場を決めたのは、DXソリューションや動画事業を軸に今後広がっていくであろう顧客のニーズをしっかりとカバーし、さらなる事業成長に繋げることが目的だ。

「これから5Gが本格的に普及すれば、大きなパラダイムシフトが起こるはずです。動画の通信速度が上がり、UXの考え方も大きく変わる。そうなった時に顧客の新たなニーズをちゃん抑えていけるように、積極的に投資ができる状態を作りたいと考えていました」(須藤氏)

無知で愚かだったからこそ挑戦できた

10年務めたリクルートを離れ、無謀にもアメリカで会社を立ち上げる。結局のところ「自分自身が無知で愚かだったからこそ、その選択が取れた」と須藤氏はこれまでを振り返る。

「もし7年前に戻って当時の自分に声をかけられるのであれば、全力で『目を覚ませ』と伝えます。でも、その時の僕はアホなので結局もう1回起業するはず。賢くなると、チャレンジすることの大変さを避けてしまう。当時は起業した後に死ぬほど苦労することを分かっていなかったから、今の道を選べました。それに共感してくれる共同創業者がいて、Kaizenをスタートできたことは、これまでの人生で最高の意思決定でした」(須藤氏)

実際に起業してみると苦労の連続で、いちいち後悔する暇もないほど「常になんとかしなきゃ」と追われるような毎日が続いた。それでも「顧客や、顧客体験のことを考えるのが本当に好き」で、仲間たちと毎日そこにチャレンジする権利をもらえていることが、大きな原動力になったという。

今後は自分たちだけでなく、アセットを保有する大企業との連携にもより力を入れていく計画だ。すでにNTTアド、大日本印刷、電通とは資本業務提携を締結し、共同でサービスを開発したり、ジョイントベンチャーを通じた取り組みも始めている。