VaRが現在でも一つの有効なリスク指標であることには違いありません。しかしながら、「どの程度の確率でどの程度の損失以下にとどまるか」と同時に、「もしも実際に異常なことが起きた場合、どの程度の損失を被るのか」を知ることが大切です。
 そのため近年では、ストレステストの実施や期待ショートフォールといった指標が重要視されてきています。

もっともおいしい原資産は「日本」

 余談ですが、LTCM破綻の10年後の2008年夏、LTCMでトレーダーとして働いていた人物と話をする機会がありました。彼に、「当時のトレードでもっとも好きだったものは何か?」と聞いたところ、「Japan」と即答しました。

 日本では当時ワラントや転換社債が多く取引されていました。ワラントや転換社債は、本質的にはコールオプションです。彼らは当時、それらを本質的価値を下回る額で購入することができたそうです。
 彼らが日本で行っていた取引のほとんどが「ホームラン」(膨大な利益を生む素晴らしいトレードのこと)だったと言っていました。

 また彼によると、「LTCMに関する書籍では一切触れられていないが、実際にはLTCMもストレステストは行っていた」そうなのですが、残念ながらこれに関しては大きな欠陥があったと言わざるをえないでしょう。

(次回は、4月3日に掲載します)


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目次

1章  オプションとは
2章  プットコールパリティ
3章  オプション価格はどう決まるか
4章  オプション価格計算モデル
5章  ボラティリティとは
6章  ボラティリティサーフィス
7章  スプレッドとは
8章  グリーク
9章  グリークの視点からのスプレッド
10章  コールとプットの等価性
11章  オプションアービトラージ
12章  アメリカン型オプションの早期行使
13章  トレーダーの視点
14章  VIXとは
用語集
正規分布表
索引