ジブリヒロインでわかる自分の特性
あなたは「雫型」?「キキ型」?

 鈴木さんはよく、ジブリ作品のヒロインを例にとり、世の中には2種類の人間がいる、ということを説明していました。『耳をすませば』の月島雫と『魔女の宅急便』のキキです。ふたりとも同じ思春期の女の子です。

 雫かキキ、どちらが好きかで、その人のタイプ、人生における価値観が決まる、という質問なのですが、答えはこんな感じです。

 将来に夢を持って突き進むタイプが「雫型」。

 夢や希望よりも、自分に与えられた仕事を一つひとつこなすのが「キキ型」。

 鈴木さんの横で、何度お客さん(特に若い人たち)に、この質問を投げかけるところを聞いたかわかりません。

 鈴木さんが何か問いかけをする場合は、必ず目的があります。この問いの目的は、夢や希望を持つことよりも、大切なことがあるということを伝えるためなのです。

 雫を選んだ人には、ちょっと耳の痛い話が返ってきます。

「ぼくはね、キキが好きなんですよ。雫はね、小説家になろうって決意するでしょ。好きな男の子がバイオリン職人を目指しているのを見て影響されちゃってさ。でも、雫に本当にそういう才能があるかわからないでしょ?雫が書いた小説を爺さん(西老人というキャラクター)が読んでさ、『君は原石だ』って言うじゃない?でもあれって無責任だよね、もしかしたら雫はこれから、自分に才能がないと知ってものすごく苦しむかもしれないのに」

 そして『魔女の宅急便』のキキに関しては、こう言います。

「それに引き換えキキにとって『魔女』っていうのは、親から受け継いだ血でしょ?キキは、生まれつき自分が持っている能力を生かすにはどうすればよいか……と考えて、『魔女の宅急便』の開業を決意する。そのなかで、挫折を経験して飛べなくなり、出会いと学びを通して再び飛べるようになる。自分の持ち物を理解して、どう働くかを考え、一歩一歩、その目標に向かって努力する。ぼくはキキの生き方のほうが好きだなぁ」

 ぼくは当時、この話題が出るたびに、何か自分の生き方が否定されているかのような居心地の悪さを感じていました。

 夢や希望を持つことは決して悪いことではありません。

 ですが、それを獲得できるか、また、そこへ向かって一歩一歩努力することができるかは、その人が本来持っているものに大きく由来する。そのことを認めないかぎり、人は本当の意味で前へ進むことはできないということを、このエピソードは教えてくれます。