クリエイターである高畑勲さんや宮崎さんも、常に襟のあるシャツを着て、ズボンにはきれいなクリース(折り目)がついています。

 ぼくは、篠原さんからアドバイスをいただいて以来、スーツかジャケット、シャツを常に着用するように心がけています。

本来の自分をさらけ出すほうが「得」
持って生まれた「核」で勝負

 若いころのぼくは、周囲から「完璧な仕事をする、優秀な人間」と見られたいと思っていました。だから失敗も人一倍恐れていたし、「自分はみんなと違う」という壁をつくっていました。

 ですが、本当の自分は、「よく失敗するけれど、立ち直りの早い、明るい人間」なのだと気づきました。残念ながら、完璧に仕事をこなすことはできないし、頭脳明晰な戦略家でもない。

 でも「失敗を恐れず、すぐに這い上がって物事をなんとかする」という、生まれ持った泥臭い性分は、けっこう役に立つようなのです。正直にさらけ出したほうが、「得する」場面が多かった。

 ぼくのまわりにはいつも、自分よりも優れた才能のある人がたくさんいます。そんな人たちに、「石井がいると、なんとかなる気がするんだよね」という言葉をかけてもらえることがあります。

 それは、立ち直りの早い性質からくるトラブル対応のおかげなのです。ぼくは、問題が起きても、すぐに別の手を考えます。思考停止にならず、どんどん具体的な提案と行動をするところが長所らしい。

 一方、こまかいミスも多くて、先日も大事なプロジェクトのメンバー全員に送った確認メールで、あろうことか重要な日付を間違えてしまいました。でも、そんな失敗をみんながフォローしてくれて、チームの親密度が深まった瞬間でもありました。「完璧な自分」を目指すより、ずっといいのです。

 いつしかぼくは、自分の失敗やダメなところを、積極的に人に話すようになりました。ダメな自分をさらけ出すほど、周囲はぼくのことを評価してくれます。

 一方、「こうありたい自分」を目指せば目指すほど、人との距離が離れてゆくのです。

「こう見られると得」という自分が、結局「本来の自分」であったというのは、この本の本質に通じます。つまるところ、自分を捨てて残ったもの――持って生まれた「核」で勝負するほうが何事もうまくいくのです、きっと。