付加給付があるのは「組合健保」
高額療養費限度額が2万円⁉︎

 日本では、年齢や性別、国籍に関係なく、この国で暮らすすべての人に、公的な医療保険(健康保険)に加入することを義務付けている。

 加入先は、年齢や職業によって分類されているが、75歳未満の人の加入先は、(1)企業や団体などに雇用されている労働者が加入する「被用者保険(健康保険)」、(2)自営業やフリーランス、無職の人などが加入する「国民健康保険」に大別される。

 さらに、(1)の労働者のための健康保険には、全国健康保険協会(協会けんぽ)と組合管掌健康保険(組合健保)の2つの制度があり、どちらに加入しているかは、おおむね次のように分かれている。

・主に中小企業の従業員と、その扶養家族 
⇒ 全国健康保険協会(協会けんぽ)
協会けんぽの前身は、国が運営していた政府管掌健康保険(政管健保)で、独自の組合を持たない中小企業の労働者が加入する公的医療保険の全国組織。

・主に大企業の従業員と、その扶養家族
⇒ 組合管掌健康保険(組合健保)
従業員数700人以上の事業所が、国の認可を受けて独自に運営している公的医療保険。企業単体だけではなく、出版業や印刷業、外食産業など、同じ業種の複数の企業が集まって共同で運営しているケースもある。

 この2つの制度のなかで、付加給付があるのが後者の組合健保だ。付加給付は、法律で決められた健康保険の給付(法定給付)に加えて、それぞれの組合が独自の保障を上乗せする任意の給付だ。

 法律で決められた給付ではないので、すべての組合健保が付加給付を行っているわけでない。だが、大手電機メーカーや自動車メーカー、銀行、生命保険会社、マスコミなどの健保組合は、それぞれの体力に応じて、従業員の福利厚生のために、法定以上の充実した給付を行っているところがほとんどだ。

 たとえば、ある大学の職員が加入する健保組合では、高額療養費の限度額が所得に関係なく1カ月当たり2万5000円という付加給付を行っている。

 高額療養費は、患者が支払う医療費の自己負担額に上限を設けることで、医療費が家計の大きな負担にならないように配慮された制度だ。

 自己負担限度額は、年齢や所得に応じて異なるが、70歳未満で一般的な所得の人の場合、法律で決められた限度額は、【8万100円+(医療費-26万7000円)×1%】だ。1カ月の医療費が100万円だった場合の患者の自己負担額は約9万円になる。

 だが、上記の大学の健保組合の加入者は、同じように医療費が100万円でも自己負担するのは2万5000円だ。通常より、医療費の負担は6万5000円も安いのだ。

 この組合健保の加入者は、たとえ医療費が500万円、1000万円と高額になっていっても、自己負担するのは2万5000円を超えることはない。つまり、付加給付のある健保組合の加入者は、通常よりも医療費の負担を大幅に抑えることができるのだ。