死亡時の埋葬料上乗せや、不妊治療にも
独自の特典をチェックしよう

 高額療養費のほかにも、健保組合の付加給付には次のようなものもある。

〇傷病手当金
 傷病手当金は、病気やケガで仕事を休んで、給与がもらえなかったり、減額されたりした場合に、健康保険から給付される所得保障だ。

 法定給付では、1日当たりの給付額が標準報酬日額(日給)の3分の2で、給付日数は通算で1年6カ月となっている。ところが、大手電機メーカーなどでは、日給の80%を最長3年間という付加給付を行っているところもある。

〇出産育児一時金
「妊娠・出産は病気やケガではない」という理由により、正常分娩には健康保険が適用されていない(ただし、2026年をめどに保険適用を検討中)。その代わりに設けられているのが現金給付の出産育児一時金で、健診や出産費用の負担軽減が図られている。

 法定給付では、健康保険の加入者やその家族が出産した場合に、子ども1人につき50万円の現金給付が行われる(2023年4月以降の出産)。出産育児一時金の付加給付は、法定給付の50万円に加えて、一律の現金給付を上乗せする方法を取っているところが多い。たとえば、出版系の健保組合では標準報酬月額(月収)の半額を給付していたり、大手自動車メーカーでは一律に30万円を上乗せしたりするなど充実している。

 この他、死亡時の埋葬料に上乗せをしたり、不妊治療に独自の給付を行ったりしてくれる付加給付もある。また、入院時に差額ベッド料がかかった場合に、その費用を補助してくれる制度を設けている健保組合もある。

 このように、健保組合の付加給付は、医療費の負担を大幅に軽減できたり、病気やケガで休業した場合にも充実した保障が受けられたりと、かなり有利な内容となっている。自分が加入しているのが付加給付のある健保組合なら、それは間違いなく「お宝健保」といえるだろう。

 前述のように、組合健保は主に大企業の従業員とその扶養家族が加入するものだ。さらに、付加給付はそれぞれの組合の財政事情などに応じて、独自に行われるものなので、健保組合に加入している人すべてに通じる話ではない。そもそも、国民健康保険に加入する自営業者、協会けんぽに加入する中小・零細企業の従業員には縁のない話だ。

 だが、健康保険組合連合会の「令和4年度健康保険組合 決算見込状況」によると、2023年3月末時点で1383組合の健保組合が存在している。被保険者数(加入者本人)は約1659万人、被扶養者数(扶養家族)は1165万人で、合計2824万人が組合健保の加入者だ。

 これは、2023年4月1日時点の総人口1億2455万人の22.7%を占める数字で、日本で暮らす4人に1人が、健保組合に加入していることになるのだ。