運動したい、でもできない……。そこで本連載は論文マニアとしても有名な大谷義夫先生(医師)が、82の論文、世界の最新エビデンスをもとに正しく効果的な歩き方を書いた本『1日1万歩を続けなさい』から、今日から役立つ「歩き方のコツ」をお伝えします。ウォーキングは体にいい。それはたしかに事実です。でも実は「ただ歩くだけ」では効果が出にくいことをご存じでしょうか。同じ歩くなら「科学的な歩き方」で「最大効果」を手に入れる。ここを目指してみてください。
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階段は上りがキツい!
「健康のために階段を駆け上がっています!」
駅や商業施設のエスカレーターは使わないなど、「階段上り」をがんばっている人は多いようです。
しかしなかなかくたびれそう。
では実際のところその効果はどうなのでしょうか。
階段は「上る」より「下る」!?
国立台湾師範大学の研究チームは、「階段上り」と「階段下り」について、それぞれ週2回、徐々に回数を増やしながら12週間試してもらってその効果を比較するという調査を行いました(※1)。
するとなんと階段は「上り」より「下り」の方が体に効くことがわかったのです。
下った方が筋肉量増、血圧、血糖値、中性脂肪、悪玉コレステロール減
たとえば膝を伸ばす筋肉量は、階段上りでは14・6%増であったのに対し、下りは34・0%増。
心拍数、収縮期血圧(上の血圧)、血糖値、ヘモグロビンA1c、中性脂肪、LDLコレステロール値も階段下りの方が数値が下がり、善玉と言われるHDLコレステロールについても、下りの方が上がっていました。
「上り」にこだわらなくていい
ただこの調査で対象となったのは「60歳以上の肥満女性」で、若い方については断言ができません。
でもどんな年齢の方も当てはまりそうですし、階段は「上り」にばかりこだわらなくてもいいのかもしれません。
転倒にはご注意を
このデータに驚いて、私も「階段下り」を試してみたのですが、下りはすべって転倒しないように意識するせいか、たしかに負荷がかかります。
そのため一定の年齢以上では、下りの方が有効だと私自身も感じます。
ただ階段は上りでも下りでも、くれぐれも転倒には注意してくださいね。
※本稿は大谷義夫著『1日1万歩を続けなさい』より、一部を抜粋・編集したものです。本書にはウォーキングの効果にまつわるさまざまなエビデンスと、具体的かつ効果的な歩き方が紹介されています。
※1 CHEN TC ,et al. Effects of Descending Stair Walking on Health and Fitness of Elderly Obese Women. Med Sci Sports Exerc. 2017 Aug;49(8):1614-1622. doi: 10.1249/MSS.0000000000001267.