家主の負担が減るように
契約者との契約体系は解決策の一つになる
この問題に対して、山本さんは、ある解決策を実践している。
その解決策とは、入居者との契約方法に工夫を加えて家主の負担を減らすことだ。
「万が一、入居者が亡くなった際は、残地物の処理と残置物の換価や指定先への送付、賃貸借契約の解除を行うことをあらかじめ契約書に盛り込んでいるのです。この契約方法により、家主の負担が軽減し、高齢者の方が入居しやすくなると考えています。実際に弊社ではこの方法を採用していて、自社が仲介した高齢者の残地物の処理等を行う受任者となるパートナーの不動産会社が全国にあります」
さらに同社は「居住支援法人」の指定も受けている。これは、住宅セーフティネット法に基づき自治体が指定した団体のことで、高齢者の賃貸住宅入居に関する情報の提供や、入居後の見守りなどの生活支援を行う団体を指す。以前はNPO法人などに限定されていたが、民間の企業も指定を受けられるよう制度が変わったのである。
また、2023年12月から大手電力会社が出資する会社と共同で「単身高齢者向けの見守りサービス」の実証実験を始める予定だ。
「政府が動き出し、高齢者の住宅難民問題は少しずつ改善されていると感じています。とはいえ、まだ十分ではありません。ですからできるだけ情報を集め、知識を身に付けて準備を整えておくことが、解決への一歩だと考えています」
同社は、他の不動産会社とパートナー制度という形で連携を取っており、全国各地へと支援の輪が広がっている。
「これからも高齢の方が入居可能な賃貸物件を増やし、いくつになっても、好きな場所に住める社会を実現したいと考えています」
ところで、冒頭で紹介したA子さん、その後どうなったかというと――R65不動産の仲介で無事に住まいを見つけ、今は新居で暮らしている。退去期限まで1カ月という切羽詰まった状態ではあったが……。
(吉田由紀子/5時から作家塾(R))