Metaも主要メンバーのAIアライアンスに、
GoogleやOpenAIの姿はなし
一方で、自社のAI技術のオープンソース化に熱心なMeta関連の大きなニュースは、(やはり英語圏向けのリリース優先で日本ではまだ利用できないが)FacebookやInstagramなどの自社サービスに生成AI機能を導入したこと、そして、他の企業や教育機関と共に“AI Alliance(AIアライアンス)”を発足させたことだ。
前者の生成AI機能は、自社の大規模言語モデルである“Llama 2”や画像生成技術の“Emu”を実際のサービスの中に組み込んだもので、FacebookストーリーズやMessenger、Instagram、WhatsAppのAIスタンプ機能や、Instagramにポストするイメージのスタイルや背景をプロンプトで変更する“Restyle”と“Backdrop”機能を通じて利用できる。加えて、imagine.meta.comのWebアプリでのイメージ生成も可能だが、こちらも現状では英語圏のみでの展開となっている。
また、MessengerやInstagram、WhatsAppのアプリや、「Ray-Ban Metaスマートグラス」、「Meta Quest 3」のハードウエアで利用できるLlama 2ベースのMeta AIを誕生させ、大坂なおみなどの著名人をモデルにした28種のAIキャラクターとチャットできるという新機軸も打ち出した。
その一方で、以前からメタバース関連のパートナーシップを締結していたMicrosoftとの連携も強化し、リアルタイム検索や画像生成にBingの機能を利用したり、クラウドプラットフォームのAzureとWindowsでLlama 2をサポートしたりといった技術の相互補完も行っている。
こうしたMetaのオープンな姿勢がよく表れているのが、IBMをはじめ、Intel、AMD、Dell、Stability AI、ソニーグループなど多彩な業種の50以上の企業などと共に「責任あるAI推進」を掲げて発足させた“AI Alliance(AIアライアンス)”だ。参加団体には、CERN(欧州合同原子核研究機)や機械学習アプリの作成ツールの開発企業であるHugging Face、Linux Foundation、NASA、Oracleなどに加え、東京大学、慶応義塾大学、エール大学、コーネル大学、インド工科大学ボンベイ校、スイス連邦工科大学ローザンヌ校などの大学も少なからず含まれており、教育界からの関心も高いことが分かる。ただし、そこにはGoogleやOpenAI、Apple、Xの名前はなく、ひと口に「責任あるAI推進」といっても、それぞれの思惑に違いがあることが浮き彫りとなった形だ。
Metaは9月にVR/ARゴーグルの「Meta Quest 3」とスマートグラス「Ray-Ban Meta Smart Glasses」を発表したが、どちらも同社が期待したほどには売れていない。また、12月上旬には、(すぐに製品化の予定はないものの)Apple Vision Proに似たVRヘッドセットコンセプト“Mirror Lake”のレンダリング画像の公開も行った。しかし、ひと頃のメタバース熱は沈静化しており、代わってアクティブユーザー数の多い自社SNSを利用して生成AI分野の主導権を握ろうとしているように見える。ザッカーバーグとしても、メタバース事業に関する自身の判断ミスから生じた失地を回復する必要があり、生成AIやAIキャラクターによって自社のSNSに若いユーザーを呼び戻し、新たな収益モデルを確立しようと模索しているのだろう。
その上でMetaには、Googleと同様に独禁法やプライバシーに関する問題でアメリカ政府からにらまれ、メディアからも叩かれてきた過去がある。AI関連ビジネスで技術のオープン化やAI Allianceへの参加を積極的に行っているのも、そうしたネガティブなイメージを払拭するための戦略とみることもできそうだ。実際にそうできるかは、AI Allianceの本格的な活動も始まる2024年のかじ取りにかかっているといえよう。