マス向けのサービスをつくることがゴールですから、そのための近道となる選択をしているだけです。資金力のある企業の力を借りた方がマスに広がると思ったら売却しますし、独立した方がスピード感のある経営判断ができると思ったら独立します。

 今、インスタグラムやユーチューブは皆が使うマス向けサービスですが、「インスタグラムが広まったのは7年前にフェイスブックが買収したからだ」とか「ユーチューブは13年前にグーグルが買収したから今の規模になったんだ」とか言う人は、誰もいませんよね。大事なのは広まった過程ではなく、サービスを生み出すことです。マス向けのサービス自体が一番偉いんです。

「普通の人ではない」ことを受け入れる

――サービスのアイデアはどのように生まれるのですか。

 僕は、自分自身を普通の人だとは思っていません。普通とは違う感覚を持っていると受け入れた上で、マスの人たちにできるだけ近いところで物事を見るために、意識的に「普通の生活者」として過ごすようにしています。興味がなくても、はやっている曲を聴いたり、近所のスーパーマーケットに行ったり。逆に、そうしないとマス向けのサービスはつくれないと思っています。

――著書『実験思考』にある「誰もやったことがないことを試してみたい」という考え方は、いつから持っているんですか。 

1日で3.6億円ばら撒いた起業家、バンク・光本勇介が狙う「次の実験」著書『実験思考』(幻冬舎)。発売からわずか1ヵ月半で1億円の課金を達成した

 昔からあった気がしますが、だんだん強まってきました。これまでいろいろな実験をしてきましたが、自分が考えて立てた仮説通りになったことがほぼないからです。それなら、まず試してみて世の中がどうなるか見た方が、手っ取り早いことに気付きました。リスクを恐れてやらない人の方が多いけれど、実はすぐにやってみてしまうことで生まれるメリットの方が大きいと、起業して10年間、失敗を重ねて学びました。

――常に何か実験しているんですか。

 常にたくさんの実験をしています。思いついたことをすぐに形にしてみて、実際にサービス化できるか考えます。その結果、今回のモノ払いのようにサービス化することもありますが、世の中に出さないものもたくさんあります。まずつくってみる“スピード感”が大事なんです。

狙い目は「既存のトッププレーヤー」がいる業界

――事業を成功させる秘訣は何だと思いますか。

 今が成功しているとは思っていませんが、以前よりも多くの人に知ってもらえるサービスをつくれるようになってきました。失敗を繰り返した結果、ビジネスは「市場選択」と「タイミング」がすべてだと学んだからだと思います。極論、この2つだけカバーしていれば、うまくいきます。