新宿マルイを運営する丸井グループは近年、D2C領域に積極的に投資してきた。前述のFABLIC TOKYOのほかヘアケアブランドの「MEDULLA」、そしてD2Cブランドの多くが利用するEC構築プラットフォームBASEへの出資に加え、2月にはD2C支援特化の新会社・D2C&Co.の設立を発表した。
1月に設立が発表されたb8ta Japanは、米b8taとサンフランシスコのベンチャーキャピタルであるEvolution Venturesとの合弁会社だ。丸井グループ、三菱地所、カインズはEvolution Venturesを通じて、凸版印刷は米b8taを通じて、それぞれb8ta Japanに出資している。
2月の発表によると、丸井グループは2023年3月期までの7年間で合計300億円の投資を計画しており、これまでに約130億円の投資を実行した。今後は戦略投資の対象としてD2Cスタートアップに重点を置き、投資活動を展開していくという。
有楽町マルイにはMEDULLAが、渋谷マルイにはBASEが常設ショップを展開しているが、丸井はb8taの出店を通じ、D2Cブランドのマルイ店舗への出店をさらに加速させたい考えだ。
そして丸井は2019年11月、ポップアップストア出店支援サービスの「SHOPCOUNTER」や商業施設DX(Digital Transformation:デジタルトランスフォーメーション)支援サービスの「adpt OS」の開発・運用を行っているCOUNTERWORKSとの資本業務提携契約を締結している。これまではテナントを持たないと出店できなかった新興D2Cブランドが、ポップアップストアなど、これまでになかった短期間・安価なプランを選択してマルイに出店できるようになる。その結果、マルイの店舗の価値向上を狙う。
丸井は2月のプレスリリースで「ただモノを買うだけならネットのほうが便利であり、リアル店舗のようにオフラインをベースにしたビジネスは根本的な見直しが迫られています。こうした変化を踏まえ、アフターデジタル時代に対応した新たな価値を提供する店舗へと進化するために今後注力していくのがD2Cです」と説明している。
強みはオフライン出品の低リスク化と顧客体験の可視化
だが、ECで顧客に直接商品を販売できるD2Cブランドにとって、b8taでの店舗販売は本当に必要なのだろうか。
北川氏は「D2Cでは、オンラインで販売を始めファンを獲得しますが、成長していく過程の中で、次のステップとして『直営店を開こう』というフェーズは必ず来ると思うんですよね。特にアメリカとかのD2Cで成功している企業ですとそこが上手くいっているパターンが多いと思います」と話す。