b8ta Japan カントリーマネージャー北川卓司氏

確かに、TIMES誌が「世界一快適」と評した米国のスニーカーのD2Cブランド「Allbirds」もEC販売で事業を開始し、今では米国、中国、英国、日本を含む様々な国々で店舗を運営。顧客との接点を増やし、売上を拡大させている。

「ECからスタートし、自社の店舗を開こうと考える際に、『実店舗とはどういったものなのか』、『どういった費用感で出来るのか』といったことは、なかなか想像するのが難しいと思います。b8taでは出品料を支払っていただくだけで(新宿、有楽町といった)良いロケーションでの販売が可能となり、『こんな感じなのかな』といった感触を得ることができます。また、面と向かって関わることのなかったユーザーやファンなどと、テスター(b8taの店舗スタッフ)を介したコミュニケーションを取ることで、『どのような声をお持ちなのか』といった情報を吸い上げることが可能です」(北川氏)

b8taに出店する企業は、月額30万円前後の出品料を支払うことで、運営に必要なスタッフから在庫管理、物流サポート、POS(販売時点情報管理)まで全て提供される。また、設置された2種類のカメラが収集した、顧客の性別や年齢、そしてb8taでどのような体験をしたかなどといった情報を得られる。b8taはこのビジネスモデルをRaaS(Retail as a Service:サービスとしての小売)と呼んでいる。

北川氏は店舗を構えるb8taの強みは、企業のオフラインへの出品のリスクを極限まで下げ、よく訓練されたスタッフから定性的なフィードバックを得られることだ、と話す。そのため店舗スタッフの採用とトレーニングにはこだわった。

「量販店や百貨店よりも、もう一歩踏み込んで商品の説明ができるようにしたい」(北川氏)

b8ta Japanに出店予定のユカイ工学は東急ハンズやロフト、ラオックスでも商品を販売しているが、代表取締役社長の青木俊介氏は「どれほど多くの顧客が実際に足を止めているかがわかる」ことが大きな期待だと話す。他店舗が提供する売上状況の情報は「1カ月単位」と大まかだが、b8taではより細かなデータが得られる。

目指すは店舗拡大とB2B展開そして日本ブランドの越境

8月1日にいよいよ日本でも2店舗が開店するb8ta。コロナの影響で開店が後ろ倒しになるなどトラブルもあった。

北川氏は、b8taに出品するような潜在的な顧客企業も「オンライン販売に対する出資が増えている」と言うが、同氏は一方で、「オンラインは飽和状態になり、今後も更に情報過多になっていく」とも見ている。だからこそ、b8taでは店舗ならではの優れた顧客体験を追求していく。