個人向けのウォレットアプリ「Kyash」や企業向けの決済プラットフォーム「Kyash Direct」を展開する同社は、今年7月にサンフランシスコに本社を置くGoodwater Capitalなどから約15億円の資金調達を実施。累計の調達額は28億円ほどで、株主には3メガバンク傘下のベンチャーキャピタルも名を連ねる。

Kyashのカード (同社プレスリリースより)Kyashのウォレットアプリとカード (同社プレスリリースより)
拡大画像表示

 同社ではVisaカードをベースにしたウォレットアプリ・Kyashを2017年4月にローンチ。スマホアプリ上でVisaのプリペイドカードを簡単に発行し、手持ちのクレジットカードなどからチャージすることで、Visa加盟店での決済や友人間の送金ができる仕組みを作った。

 当初はオンラインショップでの利用のみが対象になっていたが、2018年6月にリアルカードの提供をスタートし決済機能を強化。クレジットカードやデビットカードのように実店舗での決済でも使えることで利用シーンを広げている。

単独で「Visa」ブランドのカード発行可能なKyash Direct

 徐々に実績を積み上げる中で、Kyashは2019年4月にひとつの転換期を迎える。Visaがフィンテック企業やスタートアップを支援することを目的に設立した「Fintechファストトラックプログラム」に参加。Visaプリペイドカードの発行ライセンスを取得することで、自社単独でカード発行ができるKyash Directを発表したのだ。

 従来であれば事業者が自社ブランドでVisaカードを発行したいと考えた場合、Visa発行ライセンスを保有する銀行やカード会社と提携し、Visa加盟店との決済処理を担うシステム(プロセシング業務)を提供するシステムベンダーとの契約が必要だった。

 一方Kyash Directではカード発行から決済処理までの一連の機能をKyashがワンストップで提供できる点がポイントだ。この仕組みはもともとKyashが創業時からプロセシングシステムを独自で構築してきたため、そこにVisaの発行ライセンスが加わることで可能になったもの。利用企業は低コストかつ迅速に自社ブランドのカードを発行できるだけでなく、細かい設計などを含めて柔軟なプラットフォームを作れるのが特徴だ。

 10月には第1弾として経費精算サービスを手がけるスタートアップ・クラウドキャストへVisaカード発行および決済プロセシング技術を提供し、国内初となるVisa加盟店で使える経費精算サービス一体型法人プリペイドカード「Stapleカード」の発行をサポートした。