ごく普通に勤め、暮らしている人から見れば、この層に位置する人たちが、家を借りられることそのものを不思議に思うかもしれない。
だが、今や実質収入がなくとも戸建てやマンションに住める時代である。東京タワーが竣工し、ようやく戦後という時代も終わりを告げようとしていた1958年当時、日本の空き家数は360万戸、空き家率は2%だった。
その後、増加の一途を辿り、2018年には空き家数は848万9000戸、空き家率は13.6%にまで増えた。今後もさらに増加していくと見込まれている。
また、近年表面化しつつある住民の高齢化に加え、住む人が居なくなり、廃墟のような状態に陥るという「限界マンション」問題も出てきた。
エクストリーム層でも
家を借りるのが容易な時代に
こうして考えると、投資や副業として見た大家業の先行きは実に暗い。とはいえ今、誰しも貧困層に陥る危うさを抱える時代である。仮に貧困層に陥ったとしても、選り好みさえしなければ誰しも住む家には困ることはない社会になったともいえる。
生活保護受給者、金融信用情報ブラック、元受刑者……こうしたエクストリーム層が家を借りることは、かつては難しいと思われていた。
しかし令和の今、それは昔話に過ぎない。というのも母が亡くなったすぐ後のこと、一件空室が出た。急ぎ確実に客付けをしたいと思った俺は、ネットやNPOからの紹介のみならず、街の不動産業者にも頼ろうと思い、その門を叩いてみた。すると、一件目に訪ねた不動産業者は、心なしか面倒くさそうな客が来たという表情を露にしつつ、こう言うのだ。
「生活保護受給者、金融信用情報ブラック、元受刑者……。そういう人でも住むところは選びます。見た目きれいでアクセス良し。それができないのなら、いくら(客付けのための仲介料を)積まれても客付けに自信が持てないですわ――」
そして、リフォーム業者のみならず、リフォーム費用を持ち合わせていないのであれば、不動産を担保とした融資を行っている金融会社を紹介するという。