もっとも俺の経験では、エクストリーム層への貸し出しで、リフォームまでする必要を到底感じなかった。彼、彼女らは、すぐにタバコで部屋をヤニだらけにして汚す。
それに、エクストリーム層の人たちに言わせると、「家など、寝て、荷物が置ければそれでいい」という発想だ。さほど家に執着がない。ゆえに畳の表替えやクロスの張り替えなど、何の有難みもないというのが実情だ。
つまり、ごく普通に暮らす一般の人たちを想定顧客とする街の不動産屋さんの視点で考えたセールスポイントとは、異なる発想の人たち、それがエクストリーム層である。
そうしたエクストリーム層に位置づけられる人たちは、かつてよく耳にした貧困ビジネスの中の一ジャンルに分類され、不動産賃貸の世界でも新たな市場、マーケットを形成しつつあるのが現状だ。
「空き家」活用が困難に?
エクストリーム大家の岐路
この新たに形成されつつあるマーケットと、注目著しい空き家問題を絡めると、行政がこれをどういう方向に導こうとしているのか、近年の彼らの施策を見れば見るほど、その着地点が透けて見えてくる。
たとえば近頃、よく「居住支援法人(以下、支援法人)」なる言葉を耳にする。これは、低所得者や被災者、外国人といった住宅確保要配慮者への賃貸住宅供給の促進に関する法律(いわゆる住宅セーフティネット法)に基づき、都道府県知事がNPOや社会福祉法人、居住支援を目的とする企業などに、法人格を指定するものだ。
指定を受けた法人は、補助金などで優遇されることは言うまでもない。事実、国土交通省では、令和5年度の当初予算として「居住支援協議会等活動支援事業」に約10億円を計上している。
しかし、この支援法人に指定されるためのハードルは意外に高い。床面積25平方メートル以上、キッチン、トイレ、洗面所、浴室の設備が必要となることはともかくとして、「耐震性があること」も求められる。
もちろん入居者の安全を考えれば、これは当然のことだが、具体的には「新耐震基準」を満たしているかどうかを指している。