トライトンは、タイからASEAN各国、オセアニアなどの地域に順次展開を広げるほか、日本でも24年初頭から市場投入する。一方で、ミニキャブEVは、日本での生産・販売に続いて、インドネシアでの生産を始めた。三菱自が海外でEVを生産・販売するのは初のケースであり、11年の「ミニキャブ・ミーブ」で軽商用車初の量産EVを手がけた三菱自ならではの先行技術を生かしていくことになる。

 かつては、軽自動車から乗用車、小型車から大型車、商用車も小型から大型トラックまで幅広いバリエーションを持った総合自動車メーカーだった三菱自だが、1970年の三菱重工業からの独立、米クライスラー(当時)との提携を経て、2000年前後には「リコール隠し」による不祥事で経営不振となるなど、試行錯誤を繰り返してきた歴史がある。

 00年に締結した独ダイムラークライスラー(当時)による救済提携は、三菱ふそうトラック・バスが分離・独立し、最終的にダイムラーの子会社となる形で終結した。その後、三菱自は三菱重工、三菱商事が主導する経営へと転換したが、16年には燃費偽装問題で再び業績悪化を招き、当時のカルロス・ゴーン社長率いる日産が出資することで日産の傘下となった。そして、現在のルノー・日産・三菱自の3社連合に至っている。

 かつてゴーン氏は、3社のトップに君臨して、日本では三菱グループの「金曜会」に名を連ねることで権威を持ちたかったようだ。“スリーダイヤ”のブランド力はいまだに世界で通用する。

 その意味では、三菱自は、日産が筆頭株主ではあるが三菱商事の持分法適用会社(20%出資)でもある。

 今後の生き残り方としては、三菱商事との連携を深めることで、得意のASEAN地域での収益力を強化し安定化させるほか、得意の電動化技術(軽EV、PHEV)を生かした商品力強化とさらなる選択と集中が求められるだろう。それは、必然的に日産・ルノー連合依存から脱却していくことにもつながるはずだ。

(佃モビリティ総研代表・NEXT MOBILITY主筆 佃 義夫)