「ヒット作を生み出したい」とは、ビジネスパーソンなら誰もが夢見ることだ。日本中の人がその商品の名前を知っている「メガヒット」ならなおさらよい。「綾鷹」「檸檬堂」「からだすこやか茶W」「SK-Ⅱ」「ファブリーズ」「ジョイ」…これらの商品は、ほとんどの日本人が知っているメガヒット商品だ。これらの商品を大ヒットに導いたのは、P&Gジャパン、日本コカ・コーラを渡り歩いた伝説のマーケター・和佐高志氏である。彼の初の著書『メガヒットが連発する 殻を破る思考法』(ダイヤモンド社)から一部を抜粋・編集して、ヒット作を生み出すコツを学ぶ。
周囲の反対に打ち勝てるか?
マーケットはさまざまなことが起こるので、あちこちに注意が向いてしまいがちです。しかし、ある伸びたビジネスがあって、5年後、10年後に振り返ったとき、「どうしてあの会社は伸びたか」「あのブランドは強くなったか」という記事が書かれたときには、おそらくそこで書かれるポイントは、1つか2つだと私は思っています。
自分がビジネスを動かすことになったとき、考えるべきは、その1つ、2つなのです。何を動かしたら状況が改善するのか。そのポイントを見つけることが大切になるのです。
「マックスファクター」を担当していたとき、上長が1500SKUを、500SKUに絞り込みました。売り上げの6割に近い製品を切り捨ててしまったのです。残る4割の「SK-Ⅱ」と「マックスファクター」だけで戦う、と。
当時私は大反対しましたが、これは最終的に正しい判断でした。人が考えつかないような戦略的な集中です。一時の痛みを伴っても、勝ち目のあるところにすべてをフォーカスしたほうが結果は出せるのです。
この経験があったからこそ、後に私は「綾鷹」で思い切った戦略的集中を打ち出せた。そして成功したのです。
大切なところにフォーカスする勇気を持つことです。簡単な間違った選択をするよりも、難しいけれど、なかなか取りにくい選択肢を取るのがリーダーの資質だと私は思っています。
和佐高志(わさたかし)1990年、同志社大学文学部新聞学科卒業後、P&Gジャパン・マーケティング本部入社。医薬品、紙製品のマーケティングに始まり、化粧品&スキンケア、洗濯関連カテゴリー等を担当。ブランドと人材育成の実績を重ね、ブランドマネジャーからマーケティングディレクターへ。2006年、紙製品、化粧品&スキンケア事業部担当のジェネラルマネジャーとして、P&Lの責任を持つ。2009年より、日本コカ・コーラのお茶カテゴリーマーケティング責任者。「太陽のマテ茶」や「からだすこやか茶W」などの新製品発売および「綾鷹」ブランドの立て直しなどによるお茶カテゴリーV字回復を実現。2013年、同社副社長に就任し、「ジョージア ヨーロピアン」「世界は誰かの仕事でできている。」キャンペーンなど複数の大型ブランドのビジネス拡大推進をリード。2019年にコカ・コーラ社世界初となるアルコールブランド「檸檬堂」の開発責任者として成功を収め、最高マーケティング責任者に就任。2020年、日経クロストレンドが選出する、マーケター・オブ・ザ・イヤー大賞受賞。2023年、同社を退社。株式会社Jukebox Dreams(ジュークボックスドリームズ)を設立、同社代表取締役CEO就任。