実は日本とかなり違う
海外の自粛感とは

 まず、「自粛」にはおおむね日本文化独自のニュアンスがあることを念頭に置いておきたいところだ。お隣の韓国を見ると、ソウル梨泰院雑踏事故から1年後のハロウィンにおいて、街や市民が行っていた自粛には、日本のそれに極めて近いニュアンスがあった。一方で現代においては、西洋にそうした「自粛」のあり方は少ないようだ。

 服喪、すなわち「喪に服す」習慣は西洋にもあり、国や宗教によって捉えられ方・実践のされ方は異なるものの、全体的な傾向としては、厳しかった過去に比べて現代はかなり緩くなっているように思われる。アメリカでは近しい人が亡くなっても、クリスマスやサンクスギビングを祝うことを喪に服して「自粛」する必要はない。

 2022年、イギリスのエリザベス女王が崩御した際、服喪期間は国葬当日(崩御から11日後)までだったが、チャールズ国王の要請でロイヤルファミリーはさらに7日間喪に服すように求められた。つまり、ロイヤルファミリー限定の服喪期間は20日弱。

 一方でチャールズ国王は、「一般国民がどの程度喪に服するかについてはその人次第」と説明した。同国の100年以上前の服喪期間では、女性の衣装が細かく指定されたが、6カ月過ぎればこれが緩和されたそうなので、やはり緩くなっている現代を見ると時代の流れを感じる。

 東日本大震災後に、日本の様子を伝えたちょっと有名なニューヨーク・タイムズの記事(2011年3月27日付)がある。内容をざっくばらんに紹介すると、「節電を超えて気分で自粛しすぎると、経済も停滞するだろうけど、今の日本はそれをものともせず、とにかく自粛しまくっている」というようなものだが、記事内に「自粛」を表す言葉として英語で「voluntary self-restraint, or jisyuku」と説明されている。

 直訳すると「自発的な自己抑制、あるいはジシュク」となる。日本語における「自粛」のニュアンスを含意した英語がないため、日本語をそのままローマ字読みさせる「jisyuku」が追記されたわけだ。