大阪万博はただでさえ、工事が遅れています。その原因の一つが業者の労働力不足です。
建築ジャーナリストの千葉利弘氏が執筆した記事「大阪万博『工事遅れ』背景に施行能力不足」(東洋経済オンライン)によると、大阪圏(大阪、京都、兵庫、奈良)の建築着工床面積の数字は17年前には年間2500万平方メートルだったのに対し、2022年度には1600平方メートルを切るほどに落ち込んでおり、そのうち住宅が55%を占めているので、産業用建築は700万平方メートルにすぎないとのことです。
つまり、現状でも年間700万平方メートルのビルなどをフル稼働で作っているところに、突然、大阪・関西万博の会場面積155万平方メートルに相当する建設工事が加わっているのです。「いや、これは会場面積であり、その全てがパビリオンになるわけではないだろう」という反論もあるでしょうが、会場だけでなく周辺道路を含めたインフラ整備の負担もあります。
万博会場にはまだ
水道も電気も通っていない
万博会場となる夢州(ゆめしま)には、まだ水道も電気も通っていないという報道もありました(2023年12月4日付朝日新聞)。会場近くで送電を担う変電所との契約もまだという状態です。万博に直接関係するインフラ整備費は国費負担を含め計8390億円、会場建設費など万博に直接資する国費負担は計1647億円で、総事業費が1兆円を超えるという試算も報道されているほどの大規模工事ですが、現状でもフル稼働の大阪圏の建設業者だけで、この建設に立ち向かうのは不可能といっても過言ではありません。
実際、建設業界からは「本当に間に合うのか」という疑問が万博協会に寄せられていたそうです。結局、現状で期待されているのは、大阪圏以外の建設業者と外国人労働者ということになります。
しかし、国策事業ではあっても、2024年4月からは建設業に時間外労働の上限規制も適用されるため、施行能力の削減は避けられません。その上、もともと太平洋岸の大都市群の建設を支えていたのは、東北や日本海側からの出稼ぎ労働者でした。
今回、能登半島地震の復興作業で彼らのニーズが急増することが考えられ、彼ら自身も故郷を守る行動をとるはずです。「東日本大震災では、全国から労働者を集められたではないか」という反論もあるでしょう。 しかし、これも数字が冷徹に物語っています。