金利で明暗! 銀行絶望格差#14Photo:NicoElNino/gettyimages

金利上昇局面では国債の価格は下落し、評価損を抱えることになる。そこで特集『金利で明暗! 銀行絶望格差』(全16回)の#14では、全地方銀行100行を対象に、国債の金利が上昇した場合のリスクを試算。健全性を維持する自己資本額の過不足を算出し、「自己資本耐久力ワーストランキング」を作成した。(ダイヤモンド編集部副編集長 片田江康男)

金利上昇で拡大する含み損
「自己資本耐久力」を独自試算

「2年連続だ」。

 大手地方銀行の幹部は、こう言って苦笑いを浮かべた。

 地銀の中間決算が出そろった2023年11月中旬、新聞各紙には各行で国債や地方債、外国債券の含み損が拡大し、その合計額が約2兆8000億円に達したことが大きく取り上げられた。

 債券の含み損は、銀行の本業をむしばむ厄介な存在だ。

 含み損を抱えれば、銀行全体のリスク量は増える。そのため、企業へ融資する際に、どうしても保守的にならざるを得なくなるのだ。地銀には金融仲介機能を発揮して地元企業を支え、地域経済を下支えする使命があるが、その使命を全うする基礎体力をそぐことになるわけだ。

 実際、別の大手地銀幹部は、「含み損を既に抱えた状態で融資の判断をする際に、今後金利が上昇して、含み損がさらに拡大するかもしれないと一瞬でも頭をよぎれば、怖くてリスクは取れなくなる」と打ち明ける。

 そこでダイヤモンド編集部は、23年3月期の決算資料を基に、金利が1%、2%、3%上昇した場合の、地銀各行の保有する国債の含み損(修正含み損)を試算。その修正含み損を使って、“実質的”な自己資本額を計算した。

 さらに、“実質的”自己資本額と、地銀が健全性を保つために必要な自己資本額を比較。どれだけ過不足があるかを算出し、不足額が大きい順に並べてランキングを作成した。国内基準行における健全性を保つために必要な自己資本比率は、7%に設定している。

 24年前半には、日本銀行はマイナス金利解除に踏み切るとみられる。本格的な金利上昇局面が訪れ、地銀各行の含み損は、さらに拡大することはほぼ間違いない。

 そんな状況でも、金融仲介機能を発揮し、地域経済を下支えできる、十分な自己資本を保持しているか。金利上昇局面に突入したことで、改めて地銀はその存在価値が問われているといえる。

 次ページで地銀100行の「自己資本耐久力」ワーストランキングを一挙公開する。