職場で困っている人を見かけても、「おせっかいだったらどうしよう…」と躊躇したり、「たぶん大丈夫だろう…!」と自分に言い訳したり……。気づかいをするときには、つい「心の壁」が現れてしまい、なかなか一歩が踏み出せないことが、あなたにもあるのではないでしょうか?
そんな悩みをズバッと解決する書籍『気づかいの壁』の著者・川原礼子さんは、「気がつくだけの人」で終わらず、「気がきく人」に変われる、とっておきのコツをご紹介するプロです。この連載では、「顧客ロイヤルティ(お客さまとの信頼関係づくり)」をベースに、ビジネスセミナーへの登壇やコミュニケーションスキルの研修講師を通して、全国200社・2万人以上のビジネスパーソンに向けて教えてきたノウハウを、さらにわかりやすくお伝えします。本稿では、本書には入りきらなかった「褒められたときのとっさの一言」について紹介しましょう。
「聴くスキル」の重要性
若手向けの指導やコミュニケーション手段の一つとして、「1on1ミーティング」が定着しました。
ただ、「思ったような効果がなかった」「継続できなかった」という組織も多いのではないでしょうか。
1on1ミーティングに参加した若手からは、「先輩社員からのアドバイスが多い」または「あれこれ聞かれるのが嫌だ」という声も聞こえてきます。
いずれの場合も、先輩社員が一方的なケースが多いようです。
そのたびに、先輩社員の「聴くスキル」の重要性を感じます。
「きく」は3つある
「聴くスキル」を語るうえで、「きく」には3種類があることを踏まえておきましょう。
聞く(Hear):音・声を耳にうける。意識的に耳を傾けるという要素はありません。
訊く(Ask):尋ねる、問う。訊き手が知りたいことを質問することをいいます。
聴く(Listen):注意して耳にとめる。相手を理解しようと積極的に耳を傾けることをいいます。
若手が苦手と感じる先輩のきき方は、「聞く」「訊く」が中心なため、若手には「理解されていない」または「自分都合の質問ばかりされる」という印象を持たれている可能性があります。
では、どうすれば、相手を理解しようとする「聴く」になるのでしょうか。
話を聴きながら「何をすればいいのか」
うまく聴くためには「相手の言葉の背景」を聴いてみてください。
たとえば、「最近、集中できないんです」と後輩社員が言ったとします。
そこに、もしも間髪入れず「ああ、わかる。私も君くらいのころは、そうだったよ」などと話し始める先輩がいたとしたら、後輩の「集中できない」という話が、先輩社員の経験談にすり替わってしまいます。
たとえば、「そうなんだ。何があったか聞かせてもらえる?」などと質問し、集中できない背景を相手に話してもらいましょう。
相手が話し始めたら、「たいせつなワードを『受け止める』こと」も「聴くスキル」の一つです。
ぜひ、「センテンスのあいづち」で受け止めてみてください。
「そうだったんだね…」「そういうことか…」など反応すると、「うん」「うんうん」だけより、深く受け止めていることが伝わらないでしょうか。
復唱もまた、効果的です。
相手の話のキーワードをオウム返しにするのです。
相手の話への理解や、関心を示すことができますし、相手が伝えたいことの確認にもなります。
「復唱に効果があるは知っているけれど、苦手なんです…」という相談を受けることがありますが、そうした人は相手の言葉を「一週間前から仕事に集中ができなくて、睡眠を取るなど対策もしているけれど、なかなか効果がないんですね」となどと、フルセンテンスで返そうとしていることが多いです。
これでは長すぎです。
「睡眠…」「効果…」など、単語を繰り返すだけでも十分です。
聴くスキルはとても奥が深く、ほんの一例ですが、最初の一歩として、ぜひ取り入れてみてくださいね。
(本稿は、『気づかいの壁』の著者・川原礼子氏が特別に書き下ろしたものです。)
株式会社シーストーリーズ 代表取締役。
元・株式会社リクルートCS推進室教育チームリーダー。
高校卒業後、カリフォルニア州College of Marinに留学。その後、米国で永住権を取得し、カリフォルニア州バークレー・コンコードで寿司店の女将を8年経験。
2005年、株式会社リクルート入社。CS推進室でクレーム対応を中心に電話・メール対応、責任者対応を経験後、教育チームリーダーを歴任。年間100回を超える社員研修および取引先向けの研修・セミナー登壇を経験後独立。株式会社シーストーリーズ(C-Stories)を設立し、クチコミとご紹介だけで情報サービス会社・旅行会社などと年間契約を結ぶほか、食品会社・教育サービス会社・IT企業・旅館など、多業種にわたるリピーター企業を中心に“関係性構築”を目的とした顧客コミュニケーション指導およびリーダー・社内トレーナーの育成に従事。コンサルタント・講師として活動中。『気づかいの壁』(ダイヤモンド社)が初の著書となる。