1人と1頭がペアで捜索訓練
犬にとっては遊んでいる感覚

 災害救助犬の認定試験を受けるために、犬たちはどのような訓練をしているのだろうか。犬の認定試験は「ハンドラー」と共に行われ、1人と1頭がペアで登録される。

 ハンドラーとは、指導手とも呼ばれ、現場で災害救助犬と共に捜索をする「相棒」のことだ。専門の訓練士の他、民間ボランティアでは飼い主がハンドラーを務めることも多い。

 現場で捜索の作戦を考えるのはハンドラーの仕事である。救助犬の安全を確保しながら、相棒である救助犬の表情やボディシグナルを見て要救助者の発見につなげる。ペアを組むハンドラーに単独の認定試験はないが、チームを組んで日々訓練を続ける救助犬とハンドラーはまさに一心同体、強い絆で結ばれたバディーなのだ。

 基礎訓練のひとつに「ボックス訓練」がある。要救助者役の人間がボックスの中に隠れ、それを捜索し見つけ出すというものだ。要救助者役の入ったボックスを見つけるとアラート(ほえて知らせる)、その後はたくさん褒めて遊んでもらえる。

 「訓練」という名前こそ付いているが、犬にとっては大好きなハンドラーと一緒にできる楽しい「かくれんぼ遊び」のようなものだ。

 災害現場を再現した環境で行う「がれき捜索訓練」もある。見つけやすい場所から始め、犬の成長に合わせて難易度を上げていく。

 訓練は犬だけのものではない。ハンドラーが犬の様子をしっかりと観察し、常にベストな選択ができるようにすることも大事な訓練の目的だ。

 どんなに訓練を行っても、捜索活動に興味のない犬はハンドラーとの共同作業を達成することができない。つまり、訓練においては犬の主体性がなによりも重要となる。
 
 歳を取り実働を引退した救助犬の中には、現場に出ることがなくなった後でも捜索訓練を続けている犬たちがいる。その理由は、訓練をすることで犬が幸せを感じ、なにより犬自身が訓練をやりたがるからなのである。
 

能登半島地震にも出動した「災害救助犬」は、日頃どんな訓練をしているのか?雪の中で行われる冬山遭難救助訓練の様子   写真提供:加藤雅美
能登半島地震にも出動した「災害救助犬」は、日頃どんな訓練をしているのか?災害救助犬訓練施設での「がれき捜索訓練」。ハンドラーの加藤さん(左)とコア   写真提供:加藤雅美