深刻化する中国の景気低迷への懸念
現在、中国の不動産市況が下げ止まる兆しは見られない。今後、中植の破産によって信託商品の返金を求める投資家は増え、信託会社などは資産売却を急ぐことになるだろう。不動産分野から流出する資金は増え、実体経済の下振れ懸念も高まる。株価の下落リスクは上昇し、海外への資金流出も勢いづくと予想される。
マンション建設の停滞感は中国全土でいっそう深刻化するはずだ。土地の需要は追加的に低下し、地方政府の主要財源である土地譲渡益も減少する。経済成長率の低下によって税収に下押し圧力がかかり、財政破綻リスクが上昇する地方政府も増えるだろう。
中国の景気対策は地方政府が担うことが多い。財政悪化によって、中国がインフラ投資を積み増して景気対策を講じることは難しくなる。基礎資材や建設機械などの需要も減少し、生産活動や設備投資を抑制する企業は増えるだろう。
それに伴い、若年層を中心に雇用・所得環境の悪化も加速すると予想される。消費者心理の悪化も避けられない。中国ではマンションが完成する前に購入契約を締結し、ローンの返済を始めることが多い(予約販売)。購入したのに遅々として完成しない状況が続けば、返済を拒否する個人は増える。債務返済を急ぎ支出を減らす家計や企業も増え、デフレ圧力は追加的に高まる恐れが高い。
中国経済が負の連鎖から本格的に脱却することは当面、難しいだろう。中央銀行による資金供給などを支えに、中国の23年の新規融資は前年比6.8%増の22兆7500億元(約464兆円)だった。増加した融資の多くは、国有・国営企業などの目先の資金繰り確保などに回ったようだ。
例えば鉄鋼業界では生産能力の過剰が明らかであり、そうした中で融資を積み増すことは経済運営の効率性を高めるよりも、むしろ将来の不良債権予備軍になる恐れが高い。シャドーバンク大手である中植の破産により、投資に依存した中国経済のメカニズムの“逆回転”が加速したと考えられる。