「3月危機」乗り越えた岸田首相を
待ち受ける6月と9月の危機

 話を岸田政権に戻そう。自民党総裁選挙がある年は、安倍晋三元首相のような1強体制でもない限り、首相には「3・6・9」危機というハードルが存在する。それは以下のようなものだ。

〇3月危機=3月、来年度予算の成立と引き換えに退陣を余儀なくされる危機
〇6月危機=6月、通常国会終盤で、野党から内閣不信任決議案が出され、衆議院解散か退陣かを迫られる危機
〇9月危機=9月、自民党総裁選挙で対立候補に敗れる危機

 これらの危機のうち、岸田首相は3月危機に関しては、ほぼ乗り越えたと言っていい。能登半島地震の救援と復旧が最優先課題となった現状では、「岸田降ろし」に走るわけにはいかず、与野党ともに、いったん、「撃ち方やめ」とならざるを得ない。

 むしろ、地震への対応を迅速に行うことによって、岸田首相はいくらかでも求心力を取り戻す可能性もある。

「仏作って魂入れず」の
政治刷新本部は期待薄

 では、岸田首相の命運を左右する「政治刷新本部」の体制や方向性はどうだろうか。あまりに生ぬるいと筆者は思っている。最大のネックは、最高顧問に、「派閥大好き人間」と「大嫌い人間」が就いてしまったことだ。

「最高顧問が麻生派を率いる麻生太郎副総裁と菅義偉前首相。この2人は水と油です。派閥を率いる麻生氏と派閥の解消を唱える菅氏を最高顧問にした時点で、『仏作って魂入れず』になりかねないとみています」

 これは、政治ジャーナリストの後藤謙次氏の見立てだが、筆者も同感である。

 1月11日に開かれた初会合では、菅氏や小泉元環境相らが派閥の解消を唱えた。だが、麻生氏のほか、茂木派の会長である茂木敏充幹事長も本部長代行として色濃く関わる会合で、派閥の根幹に関わる問題が解決されるとは到底思えない。とはいえ、以下の4点くらいは盛り込むべきだ。

(1)裏金化の温床となってきた政策活動費を透明化する
(2)派閥の政治資金パーティーを禁止する
(3)政治資金規正法を改正して、会計責任者だけでなく政治家個人にも連座制を適用する
(4)不正を働いた大学に国からの補助金をカットするのと同様に、政党に対しても助成金をカットする

 通常国会が始まる1月26日までには、中間取りまとめが行われる見通しだが、今後の議論で切り込み不足が露呈すれば、ただでさえ超低空飛行の岸田政権は、「予算管理内閣」と化し、6月か9月で表舞台から去ることになってしまうかもしれない。