被災地の犯罪は、知事が言う通り「卑劣」な犯罪です。しかし、声高に非難したところで犯罪が減るわけではありません。日本が震災や台風、暴風、豪雪など災害大国になりつつある今こそ、新たな大方針を立て、卑劣な犯罪者に二度と犯罪を企てさせない、そして卑劣な犯罪を企てれば厳しい罰が待っていることを、知らしめる必要があるのではないでしょうか。

 たとえば熊本地震では、警察庁の発表によると、窃盗だけで43件が立件されています。震災の規模から言って、検挙数は事件数に比べて低いはずです。警察自身、やることが一杯あって、犯罪防止にだけ力を注げる状況ではないのですから。

窃盗だけでなく性犯罪まで
泣き寝入りする被害者の深刻

 窃盗だけでなく、募金や義援金詐欺、家屋補修や家屋再建融資をめぐる詐欺など、色々な種類の犯罪も多発しています。

 これらの詳細は、警察庁だけに限らず消費者庁、全国銀行協会などが犯罪の例や対策をHPに掲載していますが、震災時にはネットを見ることはもともと不可能です。そのため、チラシやボスターを避難所に配布することが対策の主流になってしまいます。

 さらに性犯罪も頻発します。性犯罪は噂が拡がりやすい避難所で起こったりして、被害者が人に知られるのが恥ずかしいため、警察に届けられずに終わっている可能性もあります。

 たとえば、「東日本大震災女性支援ネットワーク」が行ったアンケート調査では、「深夜に寝ていたところ、隣に男性が来て胸を触られた」「赤ちゃんへの授乳や着替えの様子をのぞき込まれた」といったケースや、「避難所のリーダー的な立場にある男性から物資の融通などをほのめかされたうえで、性行為を要求された」といったケースまであったと報告されています。

 これに対しては、女性警察官の見回りを増やして女性が被害を話しやすい雰囲気つくるをこと、避難所の運営や防犯の担当者に女性も加わり仮設トイレやゴミ置き場の設置場所などについて意見をくみ取ること、更衣室や授乳室にも使える女性専用ルームを設置するなどプライバシーが守られる環境を作ること、そして夜は自主的な見回りをすること、といった対策がとられています。

 今能登半島地震の被災地でも、被災者や警察、消防が必死で防犯のために戦っていると思います。しかし、窃盗や義援金詐欺は量刑としては微罪で、犯人の出所後に災害が起こると仲間と共にまた同種の犯罪を繰り返すという、常習犯の存在が疑われています。