北陸では、北陸中日新聞など無料で避難所などに新聞の配布を続けている専売所があります。テレビなど見られない情報不足の被災地では、新聞で「ここで風呂に入れる」「ここで水が飲める」といった情報を探し、貴重な情報源となっているようです。警察が新聞の協力を得て、かなり多くのページで危険人物を合法的に公開することも可能なはずです。

被災地での「火事場泥棒」を企む者へ
犯罪の代償は思いのほか大きい

 最後に、もし被災地に入って今から窃盗をしようと思っている人がいたら、注意喚起をしておきたいと思います。

 被災地で犯罪を働くと、普通の犯罪より重罪が課せられる可能性が高いことを覚悟してください。裁判官の量刑判断には、被害者や遺族感情が影響すると一般的には言われていて、その上、再発防止の観点、および被災者の悲惨な環境につけ込む行為は、決して感情的ではなく、犯罪者としての更生の可能性についても厳しく判断されるからです。

 こうした傾向は、法律の専門家の書いた論文などにも記されています。しかし難解で、一般的に目につきにくい論文を犯罪者が読む可能性は少ないでしょう。裁判所も、被災地犯罪について普通の事件より重罪と判定したケースがあった場合は、きちんと報道を要請すべきだと考えます。

 いずれにせよ、東日本大震災では、日本人の礼儀正さ、治安のよさが礼賛されました。以降、五輪やワールドカップなど世界的イベントでも、日本人の礼儀正さが世界の賞賛を集めています。

 こうした評価を高め、日本に行きたい、住みたいと思う人々を増やすためにも、警察や消防が犯罪抑止の活動をしやすい、新しい法整備を整えることを提案します。従来、緊急事態条項というと、「戒厳令=戦争への道」などと反論する人々が多いことが、この種の制度つくりのネックになっていたと思われます。ならば、「災害時」と限定してもいいのです。

 とにかく、被災地復興のために限られた人的資源、資材を有効に使い、犯罪を抑止し、卑劣な人間をこらしめるシステムを早急につくってほしいと考えます。

(元週刊文春・月刊文芸春秋編集長 木俣正剛)