思っているよりも、自分の表情は伝わらない

 同じことが、私が新喜劇の演出をしていたときにもありました。

 当時、関西で売り出し中の若手芸人の表情が舞台上ではイマイチで、「もっと笑って!」と私は指示を出しました。すると、その若手からは「笑っているんですが...」と返ってきました。

 このときに、私は「自分で想像している表情」と「人から見えている表情」は大きく違うことに気がつきました。

 このことからもわかるように、「自分の想像」をなぞっただけではもの足りません。大事なのは少し大袈裟でも相手にわかるような表情をすることです。

 その意味で、職場の空気を良くする人は、表情が非常に豊かなのです。たとえば、皆さんが本当に困っているときに同僚に相談したとして「いいよ」と言ってもらったとき。「無表情」で返されるのと「にこやか」で言われるのとだったらどっちが嬉しいでしょうか。後者の方が救われた気分になると思います。

 せっかく、快く仕事を引き受けたり、積極的に働いたりしているのにもかかわらず、「表情」ひとつで損をしてしまうのは本当にもったいないですから、頭の片隅に入れておいていただける幸いです。

 一人が少し笑顔になるだけで、職場の雰囲気は大きく変わります。皆さんがそのきっかけになってくれたら、これ以上に嬉しいことはありません。