政治家を「縁もゆかりもない選挙区」から出馬させよう、政治学者が本気で提案する理由萩生田光一氏(左)と当選確実の候補者名に花を付ける岸田文雄首相(自民党総裁)=2021年10月31日の午後、東京・永田町の同党本部 Photo:JIJI

世間を揺るがす「自民党派閥の政治資金パーティー問題」をはじめ、日本では「政治とカネ」を巡る問題が後を絶たない。筆者の見立てでは、その理由は「地元での集票活動」にカネがかかりすぎることである。悪癖を断ち切るためにも、日本の政治家は全員が「落下傘候補」となり、「地縁・血縁なき選挙区」から立候補すべきだという大胆な説を提唱したい。(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)

「パー券問題」は果たして
政治家だけの責任なのか

 自民党内の派閥における「政治資金パーティー問題」が新たな展開を迎えている。

 1月19日には、東京地検特捜部が安倍派・二階派の会計責任者を政治資金規正法違反(虚偽記載)の罪で在宅起訴。岸田派の元会計責任者も略式起訴した。

 これを踏まえ、自民党の「政治刷新本部」が1月25日に「中間とりまとめ」を決定。「派閥による政治資金パーティーの禁止」など、政治資金の透明性を高めるルールを盛り込んだ。

 ただし、原案に含まれていた「政策集団の事務所閉鎖」に関する文言は、最終的には削除された(参考:TBS NEWS DIG)。「派閥解消」を明言せず、逃げ道を残した自民党には、国民から厳しい目が向けられている。

 各派閥の対応を見てみると、岸田文雄首相は自ら率いてきた岸田派の解散を既に表明済みだ。最大派閥・安倍派と二階派も解散する方針を固めた。

 一方、「パー券問題」とは直接関係がない森山派は解散を決めたものの、森山裕総務会長は新たな政策集団を立ち上げる考えを示した。茂木派も政策集団への移行を検討している。麻生派は派閥を存続する方針だ。

 いわば、派閥の先行きは会長の判断に委ねられている状況である。このことについて不信感を持っている国民も多いだろう。しかし筆者の見立てでは、今回のような「政治とカネ」の問題は、実は「政治家だけ」が悪いわけではない。国民にも責任の一端がある。

 選挙でそうした政治家を選んだのは、われわれ国民なのだから。