日本の政治家は全員
“地縁なき選挙区”から立候補せよ

 今回の「パー券問題」において、裏金が何に使われたかは明らかになっていない。「事務所費の不足分」や「パーティー券の販売ノルマを達成できなかった分の穴埋め」など、さまざまな証言があるようだ(NHKの報道より)。全額が地元活動に投じられたと判断するのは早計だろう。だが、地元活動にカネがかかることが、さまざまな問題につながってきたのは確かである。

 思い返せば、元法相の河井克行氏と、元参院議員の妻・案里氏が20年に逮捕された選挙違反事件でも、夫妻が現金を配っていたのは「地元の有力者や政界関係者」であった。

 そこで筆者は、自民党に提案したい。今こそ、90年代の政治改革がやり残したことを実行すべき時だ。全ての政治家(および立候補者)が地元との癒着を断ち切り、地縁・血縁・利害関係のない場所から立候補する「落下傘候補」となってはどうだろうか。

 先ほど引き合いに出した英国では、下院議員の約7割が生まれ故郷でも職場でもない選挙区から立候補する「落下傘候補」となっている。

 保守党・労働党など各政党では、「公募」を実施して候補者を決定する実力主義が貫かれている。歴代首相でさえ、地元から立候補していない。地元も利益誘導を求めない。だからこそ、議員はロンドン議会で存分に活動できる(第328回・p2)。前述した経費スキャンダルは起きたものの、選挙の在り方は日本より健全だという見方もできる。

 自民党は、お茶を濁したような改革では国民の信頼を取り戻せないことを知るべきだ。全ての立候補者が見知らぬ土地から立候補するほどの、ゼロから出直す大改革が必要である。

 また、繰り返しになるが、「日本型どぶ板選挙」をなくすには国民自身も変わらなければならない。選挙において、政党の政策や政治家の人物像を見極め、選択するのは国民である。一人一人が有権者として責任ある投票行動ができるようになれば、この悪しき慣習はいずれ終焉を迎えるだろう。