「政治家の利益誘導」に屈する
国民にも問題アリ
そもそも「政治資金パーティー」とは、政治資金を集める目的で、会費を徴収して開催される宴会だ。政党は会費を集めるために、さまざまな一般企業や団体に接触する。各企業・団体のメンバーは、自民党からの見返りを期待して券を購入し、パーティーに参加する。
そうして政党との関係を強固にした企業・団体は、選挙の際に大挙して票を投じるようになる。いわば、選挙で票を集める「集票マシーン」と化すわけだ。パーティーの他にも、企業・団体の会合に政治家が出向いてあいさつをするなど、集票マシーンを作る方法はさまざまだ。
自民党にとっての集票マシーンの一つが、故・安倍晋三元首相の銃撃事件を機に問題視された旧統一教会だった(本連載第309回)。票を得るためならば、反社会的な宗教団体とも関わるのが政治家の実態なのである。
日本の政治家は、選挙で票を得るためならば、誰の所にでも、どんな団体にでも訪ねていく。どんなことでもする。勝つためなら何でもありだ。この「利益誘導」に屈して、資質に問題のある政治家に一票を投じる国民は確かに存在する。
筆者はかねて、こうした「何でもあり」の選挙の在り方を「日本型どぶ板選挙」と呼んで批判してきた。「どぶ板選挙」が行われている背景には、選挙制度改革前の日本で長年採用されていた「中選挙区制」がある。
簡単に説明すると、中選挙区制とは1つの選挙区で3~5人が当選する制度である。各党は落選者が出る事態に備えつつ、より多くの議席を獲得するために、複数名の候補者を立てることが可能だった。かつての自民党は、同じ選挙区に原則2人の候補者を立てており、他党の候補者に加えて党内でも競い合っていた。
その結果、政策に違いのない自民党候補たちが“同士討ち”を行うことになった。勝敗を分けるカギとなったのが利益誘導の多さだった。
各候補は“同士討ち”に勝利すべく、地元での活動に躍起になった。具体的には、個人後援会、支援団体、その他各種団体、地方自治体、地方議会議員などとの連絡や要望等の吸い上げ、中央官庁への陳情の媒介、冠婚葬祭への出席などであった。
地元だけでなく、議員の東京事務所でも、有権者向けの国会見学や東京見物などのツアーコンダクターのようなこともしていた。経費の大部分がそれらに費やされ、金額的負担も莫大であった。