ヨーロッパの王室で
進むスリム化
一方、日本では、宮内庁が1月6日、秋篠宮妃紀子さまが、昨年末から胃腸の症状が強く出ており、通常の食事を取られることが困難なため、今後の行事や公務へのご出欠は「侍医と相談しながら決める」ことを発表した。
紀子さまは、その翌日の午前中に行われた宮中祭祀(さいし)に出席し拝礼されたが、午後の『昭和天皇祭御神楽の儀』はご欠席になり、8日も佳子さまとともにご出席が予定されていた「手話狂言・初春の会」のご鑑賞を取りやめられた。
秋篠宮家は、公務への出席は少し無理をしてでも出席することがノブレス・オブリージュであるというお考えであり、それを実践してこられただけに、異常事態ともいえ、憂慮の声が広がった。
その後、10日に内視鏡検査を受けられたが異常はなく、ストレスで胃腸の動きが悪くなっただけということで、11日は「講書始の儀」に参加、19日の「歌会始」にも出席された。
18日は、自身が総裁である恩賜財団母子愛育会の活動視察で埼玉県までお出ましになってご覧になり、昼食も召し上がられたという。
キャサリン妃と紀子さまという日英の皇嗣妃殿下に健康不安が生じた背景には、皇室・王室の人手不足で、お二方に無理が生じていたこともある。
ちなみに、秋篠宮家は海外の皇太子と同格でないという人もいるだろうが、皇嗣殿下は皇太子と同様の位置づけを法的にも与えられており、従来の皇太子殿下と同格だ。また、イギリスには皇太子にあたる称号はなく、肩書はプリンス・オブ・ウェールズという、いわば秋篠宮などと同じ宮号で呼ばれており、皇太子というのは誤訳である。
いまヨーロッパの王室では、税金がかかりすぎだという批判を避けるために、王室メンバーを絞るようになっている。
2022年、デンマークのマルグレーテ女王は、次男ヨアキム王子一家の猛反発を振り切って、王子一家の子ども4人から王族の称号を取り上げた。女王は「将来に備え」、「時代に対応」するためだとしたが、いまにして思えば、譲位後に新国王が弟一家と待遇をめぐっていざこざを起こさなくて済むように、自ら泥を被ったのである。
スウェーデンでも同様、カール16世グスタフ国王は2019年、7人いる孫のうち、ヴィクトリア皇太子の2人の子を除く5人(カール・フィリップ王子の子ども2人と、マデレーン王女の子ども3人)を王室から排除した。人数が多すぎるという批判が広がっていたためである。
イギリスでも、不祥事を起こしたアンドルー王子とヘンリー王子、およびその家族は、公務から外されている。ケント公爵エドワード王子(エリザベス女王のいとこ)は高齢で歩行も困難で、国王以外で公務に当たれるのは、カミラ王妃とアン王女、エディンバラ公爵夫妻(エリザベス女王の三男エドワード王子とソフィー妃)、エリザベス女王のいとこであるグロスター公爵夫妻(リチャード王子とバージット妃)だけだ。
そのなかで、アン王女が高齢ながら元五輪選手らしい体力とエリザベス女王譲りの強靱なメンタルの持ち主として八面六臂(はちめんろっぴ)の活躍を続けるものの、ウィリアム皇太子・キャサリン皇太子妃夫妻への負担も大きくなっていたのである。
昨年、アン王女は、「スリム化は、もう少し王室のメンバーが多かったときに議論されていたことだ」と発言していた。スリム化は、国王の人気を間違いなく高める。だが、王室全体が責務を果たす上で、果たして賢明な判断と言えるかどうかは疑問だ。
とはいえ、英国王室には、将来の国王たるジョージ王子以外に、美しく育ちつつあるシャーロット王女とやんちゃなルイ王子という頼もしい公務の担い手候補がいるから、将来が心配なわけでない。最近では、ベアトリス王女とユージェニ王女というアンドルー王子の娘たちにも分担させてはという声もある。
かつてエリザベス女王の即位直後には、女王のいとこのアレクサンドラ王女が公務の重要な部分を担い、戦後の日本を訪れた最初の王室メンバーとなった。