住宅メーカー最終決戦!戸建てバブル崩壊秒読み#1Photo:Noel Hendrickson/gettyimages

新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、リモートワークの普及が追い風となり好調が続いていた一戸建て市場。しかし、物価上昇と労務費の高騰で需要にブレーキがかかり、バブル崩壊前夜の様相を呈している。そこで、住宅メーカー各社は生き残りを懸けて、大きな戦略転換に踏み切った。特集『住宅メーカー最終決戦!戸建てバブル崩壊秒読み』(全6回)の#1は、新旧入り乱れた序列激変必至の「大バトル」の実態を解き明かす。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)

オープンハウスの荒井社長が
「追い風はやんだ」と危機感

「追い風はやんだ。これからの環境は不透明だ」

 飛ぶ鳥を落とす勢いで急成長を続け、2023年9月期に売上高1兆円を突破したオープンハウスグループの荒井正昭代表取締役社長は、昨秋の決算説明会でそう語った。大台達成でもお祝いムードは乏しく、これからの市場環境の厳しさに危機感をにじませていた。

 新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけにリモートワークが普及し、それが追い風となって好調が続いていた一戸建て市場を「三重苦」が襲っている。三重苦とは、土地代の高騰、建設コストの上昇、実質賃金の低下――である。

 土地代の高騰と建設コストの上昇は利益を圧迫するため、ハウスメーカーやパワービルダーは、価格転嫁せざるを得ない状況にジリジリと追い込まれた。その一方で、住宅を購入する側にとっては、折からの物価上昇に加え、賃金アップが追い付いていない。

 その結果、実需を支えるファミリー層の購買意欲がそがれているのだ。国土交通省「住宅着工統計」によれば、持ち家の着工戸数は21年12月以降、24カ月連続で前年比マイナスに陥っている(下図参照)。

 三重苦による影響は、ハウスメーカーやパワービルダーの業績悪化という形ですでに表れている。

 戸建て販売棟数日本一のパワービルダー、飯田グループホールディングスの24年3月期第2四半期の販売棟数は、前年同期比で3%減の1万8700棟。営業利益は同43.5%減の367億円に沈んだ。

 破竹の勢いで成長を続けてきたオープンハウスも例外ではない。同社は23年9月期第4四半期に、戸建関連事業の販売契約が四半期ベースで初めて前年同期を下回った。

 さらに24年9月期は、13年に上場して以来初となる営業減益の見通しを示したのだ。ある市場関係者は「あのイケイケだったオープンハウスですら、営業減益の見通しとは……」と驚きを隠さない。

 またハウスメーカー3強の一角、大和ハウス工業は24年3月期第2四半期の時点で、戸建て住宅事業が営業赤字に陥った。同社の住宅事業本部長として陣頭指揮を執る永瀬俊哉取締役常務執行役員は「来年も市場環境は厳しい」と明かす。

 24年4月からは、働き方改革に伴う残業時間の上限規制がいよいよ建設業にも適用される。建設コストはより一層上がる見通しで、さらに需要に水を差すのは必至だ。一戸建て市場は、バブル崩壊の秒読み段階に入ったといえよう。

 そこで、各社は生き残りを懸けて大胆な戦略変更を打ち出した。