住宅メーカー最終決戦!戸建てバブル崩壊秒読み#4Photo by Ryo Horiuchi

主力の注文住宅から分譲住宅へ戦略をシフトし、戸建て事業の立て直しを図る大和ハウス工業が、大暴れしている。芳井敬一代表取締役社長CEOが投じた「劇薬」の効果が表れ、全国で土地を買いまくっているのだ。特集『住宅メーカー最終決戦! 戸建てバブル崩壊秒読み』(全6回)の#4では、注文住宅も維持しつつ軸足を分譲住宅に移す、大和ハウスの“一石二鳥”戦略の中身と、その勝算に迫る。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)

芳井社長の“劇薬”投入で
営業戦略が様変わり

 2023年秋ごろ、首都圏で分譲住宅を展開するハウスビルダーの幹部は、東急田園都市線沿いの駅近で好立地の分譲住宅向け用地を仕入れるため、ある仲介業者と相対交渉を続けていた。

 あと少しで契約にこぎ着けられると手応えを感じていたところだった。その仲介業者に1000万円以上も高値を提示したライバルが突如現れ、あっという間に“横取り”された。ライバルの名は、大和ハウス工業。その幹部はビッグネームの登場に、諦めるしかなかった。

 主力である注文住宅を維持しつつ、分譲住宅に軸足を移す「分譲シフト」に踏み切った大和ハウスが、大暴れしている。大和ハウスは23年、約5000区画の一戸建て向け用地を獲得した。これは、前年に比べて25%増の“爆買い”だ。パワービルダー最大手の飯田グループホールディングスや売上高1兆円を達成したオープンハウスグループ、最大のライバルである積水ハウスへの反撃体制を整えた格好である。

 大和ハウスが分譲シフトに踏み切ったのは、低迷する国内一戸建て事業を立て直すためだ。販売棟数は13年度の1万0521棟をピークに減少が続き、22年度は5762棟に沈んでいる。

 そうした苦境を打開するため、住宅事業で陣頭指揮を執る永瀬俊哉常務執行役員が、営業効率の悪い注文住宅から、コストを抑えられる分譲住宅へのシフトを決断した。これに応える形で、芳井敬一代表取締役社長CEO(最高経営責任者)は、全国の支社長・支店長にある「劇薬」を投入した(『大和ハウス工業が低迷する戸建て事業で反転攻勢!「劇薬投入」で飯田グループとオープンハウス打倒へ』参照)。

 大和ハウスが全国で大暴れしている土地の爆買いは、芳井社長が投じた劇薬の効果が表れた結果といえる。それだけではない。住宅事業の営業戦略も、大幅に様変わりさせているのだ。

 実は、大和ハウスは今、不動産業界の間で「昔のオープンハウス」と呼ばれている。なぜか。次ページでは、芳井社長が投入した劇薬の具体的な中身にも触れながら、大幅に様変わりさせた土地の仕入れ方法や営業戦略についてつまびらかにする。