目指すのは、京都でしか醸せない酒だ。原料は京都産のみと潔く、仕込み水は敷地内の井戸からくみ上げ、米は京都産の祝(いわい)、麹菌と酵母も京都育ちを選んだ。食事に合うよう、米の個性を生かしたまろやかさと切れ味も出した。仕込みは総米600キログラムと少量ずつを丁寧に、純米吟醸だけを醸す。その酒を抱え、全国へ営業に飛び回るのが酒井美里さんだ。月桂冠で大型店の営業をしていたが、一転して全国の地酒専門店へ飛び込み営業を行う日々。少しずつ特約店が増えて、高垣さんは一年中休むことなく酒造りに励む。「夏の室温は、40℃まで上がります。汗をかきながらの酒造りは、ここに来て初めてです」とスリムになった体で苦笑い。

新日本酒紀行「十石」十石 純米吟醸 祝
●松山酒造・京都府京都市伏見区東堺町472●代表銘柄:十石 純米吟醸 祝●杜氏:高垣幸男●主要な米の品種:祝
新日本酒紀行「十石」杜氏の高垣幸男さん Photo by Yohko Yamamoto
新日本酒紀行「十石」酒米は祝のみ Photo by Matsuyamasyuzo
新日本酒紀行「十石」洗米機に米を投入 Photo by Matsuyamasyuzo