「多くの人が知っている言葉の引用」、見聞きしたことがある言葉は、引用だとわかることで安心感を与えたり、パロディとしてくすっと笑えたり、話が盛り上がったりと、聞いている人を話に巻き込み同調させる効果が期待できます。

 ではもう一方の「知られていない言葉の引用」はどうでしょうか。

 たとえば、最初に挙げたスティーブ・ジョブズの「ハングリーであれ、愚かであれ」。

 スタンフォード大学の卒業祝辞を見たことがある人や、関連の記事を読んでいれば引用だとご存じだったかもしれません。

 でも、CMでも流れたあの言葉が実は引用だと知っていた人はそれほど多くなかったかと思います。そのため引用という認識は持たれることがないまま、ジョブズの名言として広がっていったわけです。

 ほかにも、マニアックな小説のある一節、偉人のマイナーな名言といったものも、知られていない言葉の引用部類に入るでしょう。

 多くの人が知らない引用は、引用した人の知識や話の引き出しの多さを感じさせます。さらにインパクトが強い言葉や事象なら、それに初めて触れることから、強い印象を残すことができるかもしれません。

 いずれの引き出しを開けるときにも気にかけておきたいのは、聞き手の年齢・年代、共有する文化的背景によって、引用した内用の認知度は大きく変わってくるということ。

 そこを意識しておくと、「知っている引用を使うか」「(おそらく)知らない引用を使うか」の使い分けができるようになります。