花の色の秘密
茜灯里 著
自然界の花の色は白色系が33%で最も多く、黄色系が28%、赤色系が20%、青と紫系が17%と続きます。
植物は自分で動けないので、種を作るために昆虫などの助けを借りて花粉を運んでもらう必要があります。そこで目当ての昆虫や鳥に「ここに食べ物の蜜がある」と自分の存在をアピールするために、花の色や香りを使います。
たとえば、ミツバチは紫外線からオレンジ色までを見ることができますが、赤は見えません。ミツバチが最も見やすい色は黄色です。なので、ミツバチに受粉の手助けをしてほしい花は、黄色系でミツバチが蜜を吸いやすい形になっています。一方、赤い花にはアゲハチョウが集まりやすいです。また、白い花を咲かせる植物が多い原因は、白は他の色に比べて多くの昆虫に見えやすいためだと言われています。
植物ごとに戦略を持って多様に進化した花の色ですが、すべての花は3種類の色素の組み合わせで色がついています。無色からうすい黄色の原因となるフラボン類、黄色やオレンジ色の原因となるカロチン類、赤色や青色、紫色の原因となるアントシアニン類です。ちなみに白い花は、本来は無色です。花びらの中に空気の小さな泡をたくさん含んでいて、光があたると光が散乱して、ビールの泡のように白く見えています。
青いバラの成功
バラは、かつては彼岸花と同じく青色がありませんでした。人気のある花なので、数十年前までは青みがかった花を持つ個体を丁寧に交配、交雑して少しずつ濃くしていきました。それでもなかなかうまくいかず、英語のブルーローズは「不可能」の比喩ともなっていました。
ブレイクスルーとなったのは、サントリーによる「花の青色遺伝子の特定」と「土壌細菌を使ったバラへの青色遺伝子の導入」です。1990年に始まったこのプロジェクトは、2004年に成功しました。園芸が始まって以来の悲願の達成に、青いバラの花言葉は「夢かなう」になりました。
青いバラの成功により、その後も、青いユリ、青いキク、黄色いアサガオなど、花の色にバイオテクノロジーを使った植物が続々と作成されています。『鬼滅の刃』は根強い人気があるので、次の「青い花」の開発のターゲットは、多くのファンが実物を見てみたいと思う彼岸花になるかもしれません。実現できた時に、青い彼岸花にはどんな花言葉がつけられるのでしょうか。『鬼滅の刃』の名言から選ばれるかもしれませんね。
・彼岸花は毒を持つが、弥生時代から食用や薬用にも使われていた
・日本の彼岸花は三倍体のため種が作れず、突然変異で青色ができたとしても定着しにくい
・花の色には理由があるが、近年は遺伝子操作でかつてなかった色が作られている