そもそも、ホンダの事業は多岐にわたり、二輪車・四輪車だけでなくパワープロダクツ(汎用エンジン・電動パワーユニット・ジェット機など)などの製品も有するが、主力はやはり二輪車・四輪車であり、まさにこの“両輪”事業が推進力となってホンダの業績を支えている。
だが、このところ全社の利益は二輪車事業がけん引する状況が続いてきた。
四輪車事業は、過剰な供給体制(工場などの余剰生産力)や開発コストの高さに加え、品質関連費用などもかさみ、収益性は低迷。19年度以降、四輪車事業の営業利益率は1~2%台で推移し、前期(22年度)は166億円の営業赤字に転落していた。そうした状況から「ホンダの自動車事業は、二輪車事業におんぶに抱っこ」とまで言われており、最大の経営課題となっていたのだ。
稼ぎ頭の二輪車に対しもうからない四輪車――。かねて、この“両輪”が対比されており、21年4月に就任した三部敏宏社長も四輪車事業の収益力向上を大きな経営課題としてテコ入れを進めてきた。
三部氏は、前任の八郷隆弘体制が四輪車の「グローバル600万台」という拡大路線で生じた負の遺産の整理に追われた調整路線から一転、CASE革新時代に向けて「第二の創業。ホンダらしさの回復、攻めの経営」を打ち出した。
社長就任会見での「2040年にホンダは世界で売る新車をすべて電気自動車(EV)、燃料電池車(FCEV)とする」という「脱エンジン」宣言を皮切りに、数々の改革を断行してきた。内部的には本田技術研究所の解体・再編などの組織改革に手を付けたほか、外部との連携では、ソニーとのEV合弁企業の設立や米GMとの提携強化、いすゞ自動車との大型トラックFCEVにおける提携など、“自前主義”から柔軟な提携戦略への脱皮を図ってきた。