総括すると、三部ホンダ体制の改革の成果が出てきてはいるものの、ホンダの四輪車事業の収益力向上については不安材料が多くまだ安定的なものではない、ということになるだろう。
ホンダに限らないが、自動車各社の足元の好業績はこれまでの半導体などの供給制約で生産できなかった分がずれ込んだ面がある。これに原材料高騰を背景にした値上げ効果、円安による為替差益など「追い風」が乗ったことで、一気に23年度がピークとなっただけとの見方もある。重要なのは三部ホンダが4年目となる24年度も、四輪車事業の収益性向上を継続できるかであろう。
ホンダの経営陣は4月から青山真二代表取締役副社長に加え、貝原典也氏が代表取締役副社長に昇格し、副社長が2人体制になるほか、藤村英司CFOが常務に昇格して4年目を迎える三部体制を固める。八郷前体制から引き継いで会長となっていた倉石誠司氏は6月の株主総会で取締役も退いて、会長は空席となる。
名実共に三部ホンダ体制に移行して、24年度以降こそ、その真価が問われることになるだろう。三部社長のアピールポイントである電動車事業では、30年にBEV生産をグローバル200万台以上に、40年に新車をBEV/FCEVで100%とする目標を掲げているが、コスト面で競争力を高めいかに収益性を上げることができるかが重要だ。
また、ホンダは、年明けに米CESで新グローバルEV「HONDA 0(ゼロ)シリーズ」を披露し、ホンダEV戦略が不変であることを明確に打ち出したが、欧米でのEVシフトに減速感が出てきているといった情勢変化に対応する必要もある。
さらに、グローバル地域戦略では二本柱の北米は堅調だが、変調を来す中国市場への対応が求められるほか、母国日本市場における軽自動車偏重からの脱却も課題だ。
23年度で四輪車事業の収益性が復活・向上したとはいえ第3四半期でその営業利益率は4%台であり、25年度に向けたホンダ連結業績全体の営業利益率7%目標には及ばない。また、同期間の二輪車事業の営業利益率は、過去最高を更新する17.5%と、四輪車事業よりも圧倒的に高い収益性を誇っている。
この「17%」との差を埋めるためにも、腰を据えた一層の構造改革が求められるだろう。
(佃モビリティ総研代表・NEXT MOBILITY主筆 佃 義夫)