それでも、四輪事業の業績面での苦戦は続いていた。前期の22年度の四輪車事業は前述の通り赤字に転落してしまったが、これは米国での大規模リコール対策費用の計上によるものだ。
それが今期は一転して四輪車事業の回復が鮮明となった。23年度上半期(4月~9月)時点の営業利益は、前年同期の5倍弱の3000億円となり二輪車を上回った上、利益率は4.7%と回復した。また、4~12月期でも四輪車事業の営業利益は4605億円、営業利益率4.6%と前期から大幅に向上しており、全社で16年ぶりに最高益を更新する原動力となった。北米での堅調な販売、半導体不足解消による生産回復、価格値上げ効果に円安の為替差益が押し上げたことが要因だ。
ただし、そこで気になるのが、ホンダの四輪車の収益力復活・向上は「ホンモノなのか」ということだ。
確かに、三部ホンダ体制も今年4月で就任から4年目を迎え、安定しつつある。社内の構造改革や日立Astemo(アステモ)・八千代工業などのサプライヤー再編も進み、半導体不足による生産・供給問題も解消した。また、原材料高も一服して収益性回復に寄与している。グローバル販売では、ホンダの収益源の大きなウエートを占める北米の景気が堅調に推移していることも大きい。
しかし、不安材料もある。北米とともに、ホンダの最近の収益ウエートが高い中国の景気が減速している。NEVを主体に販売競争が激化しており、ホンダとしても対策に頭を痛めている。また、母国の日本市場も軽自動車N-BOXシリーズが国内首位を継続しているものの、軽依存度が高いのは相変わらずで、収益性に影を落としている。