日本社会党は日本国憲法が施行された5月3日(憲法記念日)こそが日本国の建国の日だと主張した。だが、これは、日本国憲法が大日本帝国憲法の改正として行われたという政府の公式見解にそぐわない「八月革命説」という学説に基づくものだった。また、民社党は聖徳太子が十七条憲法を制定した4月3日、公明党はサンフランシスコ講和条約が発効した4月28日はどうかと主張していたようだ。

 そうした経緯もあり、具体的な建国の日は政令で決めることとし、法律可決後に建国記念日審議会を設けて検討や世論調査をし、2月11日に決まった。

 ただし、戦前に神武天皇が紀元前660年2月11日に橿原で建国した日だという趣旨で建国記念日とするのでなく、「建国をしのび、国を愛する心を養う」ための日であり、それが史実であるかどうかとか、日本国の建国というのにふさわしいかどうかは論じないということで、1967年から建国記念の日となった。

 にもかかわらず、この日はいつも、保守系の団体が「皇紀2684年 建国記念の日奉祝大会」、左派系団体が「建国記念の日に反対する集会」を開き、それらが並べられてニュースになるため、およそ国民全体でお祝いする雰囲気ではない。

 そして、政府もおっかなびっくりで、今年も岸田文雄首相は、「長い歴史の中で、我が国は幾度となく、大きな困難や試練に直面した」「一人一人のたゆまぬ努力と国民の絆の力によって築かれた礎の上に、今日の我が国の発展がある」といったメッセージを出しただけだし、陛下は宮中三殿に御拝され、皇后さまはお慎みになられただけである。

世界に皇室をアピールする
効果的な機会に

 また、「神武創業」については、学校教育では徹底的に無視されている。なにしろ、推古天皇より前の歴代天皇については、それに触れたり諡号(しごう)を教えたりすることは排除されている。一部の教科書に、大山古墳を「伝仁徳陵」としたり、日本神話の一部として神武創業が出てきたりするだけだ(高天原の出来事は神話だが、神武創業は性格上、神話でなく歴史なのだが)。

 このあたりについては、昨年の秋に、『「皇室のルーツ」どこまで知ってる?教科書では学べない“万世一系”の真偽』という記事を書いたので詳しくはそちらをお読みいただきたい。

 推古天皇より前の天皇について、生前に呼ばれていなかった名前だから教えてはいけないというのなら、そういう名前はほかにもいっぱいある。また、中国や韓国に配慮するなどといっても、中韓の歴史教科書には、はるかに現実性が低い三皇五帝とか檀君とかの建国神話が誇らしげに載っているのだから、ばかげた話である。